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寝ても覚めてもの特売小説のレビュー・感想・評価

寝ても覚めても(2018年製作の映画)
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演出上の恐怖と笑いは紙一重、という意味での笑えるホラー映画に出合う事はそんなに難しくはないと思いますけれども、足下がぐらつくような不安を植え付けられその恐怖の果てに笑けてくるハナシにはそうそう出合えるものではなく。

詰まり、本作との遭遇は僥倖であると言えると思うんですけれども。

山下リオと伊藤沙莉を眺めよう、というほんの出来心ですよそもそも観賞に臨んだ理由は。

んで。

演技の良し悪しは俺は分かんねえけど主人公を演じている娘さんはちゃんとご飯を食べているのかと心配にさせるような喋り方だねえ、だとか。

その距離感で会話をしているとなると直前の場面が成立しなくなりませんかこれ場面の順番を間違えてませんか、だとか。

不自然な台詞や反応がちょいちょい散見されるけどもこれ展開の為に登場人物の言動が調節されてるという事かしら、といった具合に。

当初は、画面に触れて起こる自らの感情を自分の言葉に翻訳しようとするじゃないですか、端的に詰まらないの一言で片付けてしまってもいいけれどもその理由を探ろうとするじゃないですか人として。

んで。

物語が或る展開を迎えた時点でそれまでの考えが全部吹っ飛んだんですよ、違うわと、そもそも主人公が主体性のない腐れ万次郎だった事が全ての原因だったと、そう思ったんですよ。

ところが。

その衝撃的展開はほんの序の口、以降全ての登場人物が常識では考えられない言動をし始めるんですよ、全員が全員、話の通じない相手に見え始めてくるんですよ。

いやさあたしだっても他者から常識を押し付けられりゃあ唾を吐いて突き返すような人間ですからして常識なんて持ち出しちゃっちゃあそれこそ語るに落ちるというやつですよ。

それでも、身丈に合わない贅沢は望まない、公共の場では遠慮する、コンビニでトイレを借りる際は一声かける、くらいの事は守って生活しておりますからして一時的に常識を持ち出させてくださいよ。

とにかく、画面内に居る人間全てが支離滅裂な言動を行い誰もそれを見咎めず、即ち俺が考える常識の外側に居てだんだんと不安が膨らんでいく訳ですよ、間違っているのは自分なんじゃないかと。

或いは作者がおかしいにしても物語の内容がぶっ飛んでいる訳でなく、調節可能な歪みではあるからまともであるとしか考えられない。

しかしまともな人間が考えた物語にしてはその登場人物も展開もナチュラルに狂ってる。

戸愚呂兄に喰われる巻原定男の心境ですよ、隣人も妻も狂っていないクリーピーですよ。

登場人物が次になにを言い出すのか、やらかすのか、物語は如何な展開を見せて呉れるのか、どう落とし前を付けるのか、予断を許さず全く想像が追い付かない訳ですよ。

詰まらないだとか御都合主義だとかそんなちゃちなもんじゃあ断じてねえ、そうそう出来ない身の毛の弥立つ体験をさせてもらったぜ。
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