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寝ても覚めてものtetsuのレビュー・感想・評価

寝ても覚めても(2018年製作の映画)
5.0
ふと観たくなって、改めて鑑賞。

運命的な出会いを果たした麦と朝子。
急速な勢いで愛し合う二人だったが、突然、麦は姿を消してしまう。
それから数年後、上京した朝子は仕事のお得意先で麦にソックリな男性・亮平と出会い...。

出演者がどうこうとか、色々話題にはなりましたが、僕にとっては映画の見方を変えてくれた大切な一本です。

劇場公開時、最終日の最終回に駆け込んで鑑賞したのですが、その時の衝撃は、とにかくすごかった。
「一体、僕は何を観たんだ...」という。笑

鑑賞前、尊敬するバイト先の先輩が激推ししていたり、フランス映画に造詣が深い大学の講師が「是枝さん*より好み」と言っていたので、期待値は上がっていたのですが、それをも裏切らない唯一無二の作風。
*『万引き家族』がカンヌで最高賞を獲った年、本作もカンヌにノミネートされていた。

主観やスマートフォンを活かした撮影の遊び心や、暗転の使い方といった斬新な演出の数々。
そして、日常にあり得そうな状況が、一言で非日常へと変わる映画ならではのシーン*が特に印象的で、リアルとフィクションが混じりあったような先の読めない展開には、「映画」の新たな側面を感じとりました。
*また、これらのシーンの何とも言えない可笑しさや不条理さは、個人的に好きなコンビ・ジャルジャルのコントにも通ずる部分がありました。

映画はフィクションだけれど、
その分、現実では出来ないことを、
容易に実現できる。
ある種、そんな救いとも言えるシーンの数々に自然と心を掴まれていたのも事実です。

また、出演者の魅力も抜群で、『勝手にふるえてろ』が好きだった自分としては渡辺大知さん(劇中のクラブでのダンスシーンでは、『勝手に...』を思い出さずにはいられない)と伊藤沙莉さん(松岡茉優さんとはドラマ『そのおこだわり、私にもくれよ』で共演しており、プライベートでも仲が良い)の共演は感慨深かったですし、やはり、東出さんのハマリ具合はすごい。

『アオハライド』では、終始サイコパスな演技に説得力がありすぎて、もはや、ただのホラー映画になっていましたが、そんな演技を見事に活かした序盤と、打って変わった後半以降の落ち着いた演技。
この塩梅が絶妙で、彼にしか出来ない二人一役を見事に成功させていたように思います。

海外版のタイトル『ASAKO Ⅰ&Ⅱ』や、作中で引用される牛腸茂雄さんの写真シリーズ『SELF AND OTHERS』など、様々な形で「自己の二面性」や「自己と他者との関係性」が強調されている本作。
「他者との関わりのなかで、自分の本心を抑え込むことが本当に正しいことなのか。」
クライマックスの急展開に好き嫌いが別れるのは納得ですが、それも含め、見終わった後、「人との関わり」について考えたくなる意義深い作品だと思いました。

参考
「GOCHO SHIGEO 牛腸茂雄という写真家がいた。1946 – 1983」展開催 | NEWS | IMA ONLINE
https://imaonline.jp/news/exhibition/20160912/
(本作に登場した写真が展示されていたイベントの概要。※イベント自体は終了しています。)

1億回記念!本気ネタ!『怒鳴り返されたん気付かん奴』【JARUJARUTOWER】
https://youtu.be/n5462bVTJY8
(逆にジャルジャルのネタが合わない人には、合わない映画な気がしてきました...。笑)


2022/1/26 追記
同居人と和室のプロジェクターで鑑賞。
本作を感性が理性を飛び越える映画だと思っており、めちゃめちゃ同居人のタイプと似てるなぁと思っていたので、一緒に見れて、良かった。
低評価が多い中、ハマらないかなぁ~と思っていたけど、「面白かった」と満足げに語ってくれたので、普通に嬉しかった。
感性が理性を飛び越える人に、ここまで惹かれてしまうのは、なぜなんだろう。
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