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さよならの朝に約束の花をかざろうのKUBOのレビュー・感想・評価

4.5
2月8本目の試写会は「さよならの朝に約束の花をかざろう」。この長〜いタイトル。そうです。「あの花」「ここさけ」の岡田麿里初監督作品です。

赤ん坊が指をぎゅっと握ってきた時の幸せな気持ちは親にしかわからない。

ほとんど歳をとらず数百年を生きるイオルフ。世界に数匹残されたドラゴン。「ゲーム・オブ・スローンズ」的な世界観に、岡田麿里もファンタジーに逃げたか?と思ったが…

素晴らしい作品でした。さすが「この花」の岡田麿里! 設定がファンタジーであろうと、素晴らしい、人の心に訴える作品でした!

これは「母と子」の物語。

人の子を拾って育てるイオルフのマキア。息子のエリアルはどんどん成長するが、マキアはいつまでも15の少女のままだ。マキアはなんとか「母」になろうと努力するが…

作品中のイオルフは15歳のまま一切歳をとらず息子だけが成長していくが、実際の親子でも、子供の成長は手に取るようにわかるけど、親は多少太ったりシワが増えたりしてもあまり変わらない。そう、劇中の「母と子」の姿は、見る者の親としての実体験に重なって、深い感情移入を呼ぶ。

無条件に母の愛を求め微笑んでくる幼児の頃。思春期になって母を意識し素直になれない頃。そして、親の身長を超えてたくましくなっていく息子。

これは「お母さん」を泣かせる映画だ。保育園や小学生の子を持つ母親は「いつかうちの息子もこんな風になるのかしら?」と思うだろうし、中高生以上の息子がいる「お母さん」は、どストライクで泣かされることでしょう。父親の私もウルっときたんだから、母親は号泣必至!

ファンタジー世界で繰り広げられる、母と子の物語。親子とは、何なのか? 血の繋がった親子、血の繋がっていない親子。それぞれの苦悩と葛藤。

私には「あの花」「ここさけ」以上の感動がありました。岡田麿里、新たな傑作です。
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