えんさん

さよならの朝に約束の花をかざろうのえんさんのレビュー・感想・評価

5.0
10代半ばで外見の成長が止まり、その後数百年生き続け、“別れの一族”と呼ばれるイオルフ族。人里離れた土地に住みながら、日々の出来事をヒビオルと呼ばれる布に織り込みながら静かに暮らしていた。そんなイオルフ族の少女マキアはある日、メザーテ軍に襲われ、帰る場所を失ってしまう。失意のうちにいた彼女は、親を亡くした赤ん坊と出会うのだが。。「心が叫びたがってるんだ。」の脚本を務めた岡田麿里の初監督となるアニメーション作品。

非常に印象的なイメージを残す作品でした。ジャンル的にはファンタジー+SFといった要素もあるのかなと思います。種族として、青年期に成長したらそれ以降は成長が止まり、数百年は生き続ける種族の主人公が、とある戦乱の中で出会った人間の孤児を育てていくというお話。孤児である少年と育ての母親になる主人公で時間の進み方が違うので、出会った頃はそれこそ若きママだったのが、やがて姉弟と、次第に恋人同士と見間違えられるくらいになっていく。しかし、根底にあるのは母子の関係。よく男は基本、マザコンと言われたりしますが、自分の状況に置き換えて考えて見ると複雑だなと感じたりします(笑)

あと、面白いなと思ったのは、根底には母子の関係がありながらも、そうした外見の違いから、対外的にいろいろな役割を2人が社会の中で演じなければいけないこと。これは暗に、いろいろ複雑になっている現代社会を象徴しているようにも思うのです。シングルマザーであったり、年の差婚や同性カップルだって社会の中では認知度が上がっている。でも、人が関係をもっていく社会では未だに若きカップルが結婚して、職が当たり前のようにあって、子どもが当たり前のようにいるという常識がベースに社会が成り立っているように思うのです。多様性とは、こうした壁を打ち破る作業だとも感じます。

そうした深いテーマを内在する物語に共感しながらも、ファンタジー作品としてもすごく面白い。それに絵のほうも緻密さと、いい意味での手抜き感を上手くバランスさせて観ているものの印象に強く残る構成にしています。いや、いい作品に出会えました。