Punisher田中

アルファ 帰還(かえ)りし者たちのPunisher田中のレビュー・感想・評価

3.8
舞台は2万年前のヨーロッパ大陸。
心の優しい少年ケダは、遂に父含む大人達と共に初めての狩りへ。
しかし、狩猟目的だったバイソンに襲われて断崖絶壁から落下してしまうケダ。
救う術もなく、仲間達はもう助からないと思い、その場から立ち去ってしまう。
なんとか辛うじて目を覚ましたケダは、今までと違い誰の手も借りずに生きていかなければならない絶望に打ちひしがれていた。
そんな中出会ったのは、とある一匹のオオカミだった。

とにかく壮大で美しい自然を堪能できる作品。
今作の主人公はあらすじにもあった通り"独りぼっち"になってしまったケダと同じく"1匹狼"になってしまったアルファだが、舞台となりストーリーを仕立てる自然も主人公であると感じられた。
もしくは、人間も動物もまた自然の一部だったんだろうな、2万年前の地球では。
しかし、動物好きにはこのストーリーが響く響く...同じく痛手を負い、諦められ、独りぼっちになった者同士が種族間、狩猟者と獲物の関係を超えて絆を育んでいくなんて本当にズルい....。
今作は、真っ直ぐに王道の友情、バディ物を最後まで貫き通してくれるので純粋に楽しめた。
この手の作品は捻りや突飛なアイディアから生まれた展開なんかは要らない、ただただシンプルであるからこそ「種族間を超えた友情・絆」というテーマが響く。

1人と1匹の友情も勿論のこと、何も無駄な物が無かった時代の自然や空が綺麗で堪らない。
昔は100%の自然だったが、どんな自然の中にも今は何かしらの人工物が目に入ってしまい、便利だけどどこへ行っても息苦しさを感じてしまう。そんな息苦しさを一時的に取っ払ってくれるような程、今作で見せてくれる自然は綺麗だった、オーロラ、芸術的な青と紫、黒のグラデーションに星々が輝く綺麗な夜空、広大な砂漠、雪が降れば白銀の世界、数々の自然が見せてくれる表情は自分の今生きている地球の自然を否定されたような気がした。
また、ケダとアルファの段々と親密度が高くなっていき、スキンシップも増えていく描写もにっこりしてしまうほど微笑ましく、気づけばこのコンビに愛着が湧くようになっていたのは上手いなと。
見た後は飼っているペットをわしゃわしゃわしゃ〜!としたくなる作品。