てっちゃん

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法のてっちゃんのレビュー・感想・評価

3.9
名優ウィレムデフォーさんが大活躍していて、本作に於けるボビーの役柄を丁寧に演じているのが分かるし、こういう難しい役柄を上手に表現できるのが彼である。

社会に生きていくのに当たり前のことは、ルールを守る、理解するということがあると思うけど、ボビーはそこをやりつつも、人間として生きていくために忘れてはいけないこと(思いやる気持ち、寄り添う気持ち)も同時にやっているので、こういう大人が必要とされているのが”今”なんだと思い知る。
このボビーの存在が非常に魅力的に描かれているのが、本作の見所だと思うくらいに好き。

なんか引っかかることがあるなと思っていたら、なんと本作では子供目線(1mほど)で撮影されているとのこと。
だから普段見えている世界となんか違うし、斜め上の角度にある世界は広くみえる気がした訳だ。
ほんで、目につくのはパステルカラーなカラフルな世界。

内容が内容なだけに重めの雰囲気はあるんだけど、こうしたものを入れることによって、子供目線で捉えている世界ってのが分かるし、中身は崩壊しているのに表面を塗りたくっている現実を現してもいるのだろうなんて、堅いことを考えそうになったけど、単純にそのアンバランスさに戸惑う。

そして鑑賞後に気づくのは、子供目線で進んでいっているように見せかけて、子供がみる世界を見ている私達(その代表がボビー)ではないのかなと思ったり。

印象に残ったシーンは、ヘイリーがマジックバンドを巡ってのシーン。
この売買しているシーンは社会の縮図だなと感じたし、どうしてそういうことになったんだっていう経緯も、非常に悲しくなってしまった。

ヘイリーにも問題があるのは分かっているし、そこへ自分で負けにいったらいかんでしょってなるんだけど、そういう背景がうっすらと気付きながらも美味しい思いをしようとする人たちも同じくいけない。
それらがなくならければ、このような負の連鎖は止まらないんだけど、じゃあどうすんのよ?って話になったとき、ボビーのような大人が必要になってくる。

あと、子供たちがイタズラによって騒動が起きた時の、ムーニーがヘイリーに写真を撮られるシーン。
このときのムーニーの表情が切なくて、それに気づかないヘイリーにも悲しくなってしまった。
本当は気づいていたのではないか、でもそれを叱ることができなかったのではないか。

人に頼ることばかりして、周りのせいにしてばかりではいけない。
まずはきちんと誠意をもって人間の尊厳を持って行動することが大事。
そうすれば希望が見えてくるかもしれないし、誰も悲しい気持ちなんて味わいたくないんだから。

最後は、えっ?って感じで終わっていくので、そこで一気に判断分かれるだろうけど、私は好きだったな。
てっちゃん

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