湯っ子

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法の湯っ子のレビュー・感想・評価

4.0
ムーニーにとってこの夏は、紫色のお城で、朝から晩まで楽しく遊んで過ごした夢みたいな日々として記憶されるんだろう。それがどういうことか、彼女がもう少し大きくなって知るまでは。いや、きっと、知ったとしても楽しかった想い出は変わらない。ムーニーはいつでも笑っていたし、踊っていたし、大好きなママや友達といつも一緒だった。
これはムーニーから見た世界であり、ムーニーの想い出の中の世界なんだと思う。
想い出と夢ってなんか似てる。そして魔法にも。

ショーン・ベイカー監督は、夢の国ディズニーワールドのすぐそばにある安モーテルに、約3年滞在取材をしたらしい。本作がアメリカの「隠れホームレス」の存在を認知させたそうだ。
「ノマドランド」が、知性も分別もあり、「あえて」家を持たない人々を描いていたのと違い、本作の安モーテルに暮らす人々は「ほかに道を選べない」その日暮らしの人々。
貧困という厳しい現実をとらえながらも、美しくカラフルな映像や、ムーニーのいつでもハイテンションでイキイキした様子を見ているのはこちらまでウキウキする。ムーニーと暮らすシングルマザーのヘイリーは、短絡的で衝動的ではあるものの、単なるネグレクトマザーとは描かず、彼女なりの愛情を描いているのには監督の優しさを感じる。

クレしんでいうとボーちゃんみたいなムーニーの友達ジャンシーは、ムーニーのために魔法を使ったんだと思う。この夏、夢の国で過ごしたキラキラな想い出を守るための。
湯っ子

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