カタパルトスープレックス

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法のカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

3.7
光り輝く太陽に隠れた存在に光を当てるショーン・ベイカー監督によるフロリダのディズニーワールドという太陽に隠れた安モーテルを舞台とした作品です。

ショーン・ベイカー監督の題材は「闇」というには明るすぎるんです。太陽の側だから目立たない。でも、闇と呼ぶには明るすぎる。フロリダのディズニーワールド(タイトルのフロリダ・プロジェクトはディスニーワールドの建設前のコードネーム)は世界から見ても眩しい太陽だけど、その周辺にあるモーテルに暮らすネズミーワールドの最下層の人たちだって明るく生きている。

今回は子供の視点。上流階級だろうが、仕事から溢れた売春婦のシングルマザーの家庭だろうが、子供は子供。楽しいことが大好きでいつも遊んでいたい。フロリダの太陽の下なのだから尚更のこと。

本作はリーマンショック後が舞台なので、不景気の真っ只中。物価上昇は下層階級を直撃。観光地の外れの安モーテルでも同じこと。貧乏だけど明るく暮らす親子だけど、その影響からは逃れられない。真綿のように首を絞められていく。それでもショーン・ベイカー監督はあまり政治的にならない。ちゃんと政治的な背景は意識してるのだけれど、それは表に出さない。すごく絶妙なバランス感覚だと思います。

キャラクター造形もいい。品も学もないのだけど、愛はある母親。愛はあるのだけど、その対象は娘だけで、世の中を信じることができない。娘はひたすらまっすぐな子供らしい子供。子供の視点だから救いがある。ちなみに最後のディズニーワールドの撮影は無許可だそうな!