円柱野郎

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法の円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

フロリダの安モーテルで暮らす母娘。
6歳の少女・ムーニーにとっての毎日は友達とのいたずらや冒険の楽しい日々だった。

言葉は悪いかもしれないけど、この作品で描かれるのは底辺の母子家庭の暮らしである。
安モーテルで暮らし、娘がいたずらをしても叱らないどころか悪びれもしない母親。
宿代の工面のために香水を押し売りし、体を売り、窃盗と転売もする。
正直、この映画を観ている間も状況としてのハッピーエンドが想像できなかった。
案の定、児童福祉局が来るという顛末に、俺は仕方がないよな…と思ってしまった部分は大きい。

しかしこの作品が描いているのは、そんな環境の中でもある意味で無垢な感性のまま子供らしく遊んでいるムーニーの輝ける世界なのだと知る。
それは母親がいて、友達がいて、毎日が輝いている夢の国。
だからこそ終盤で福祉局の人間に引き離されそうになった時に拒絶し、ラストには友達に手を引かれディズニーワールドへと逃げ込んだわけだ。
その幕引きはあまりに唐突で俺は一瞬面食らってしまったのだが、ディズニーワ-ルドが比喩でしかないのは自明だとして、ムーニーにとってはそれまでの毎日こそそれと同じ夢の国だったという示唆だよね。

視点が子供の世界なのだけど、殊更にフィルターがかかることもドラマチックにすることもなく、日常を淡々とカメラで切り取る俯瞰した感じとのバランスが興味深い。
ウィレム・デフォーが演じるモーテルの管理人がその家族を自分の立場の範囲で優しく見守っているわけだが、個人的にはそちらの方に共感した感じ。
“普通のおじさん”を演じるデフォーは良かったなあ。
円柱野郎

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