ちろる

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法のちろるのレビュー・感想・評価

4.2
子供には、大人に侵す事のできない領域がある。
東京に住んでいてつくづく感じるのだけど、最近は子供にとってのそれが無くなってきているわけで、ムーニーたちのような野生児のように生き生きと自由に動き回る子供達を久しく見ていない。
かく言う私もムーニーたちのような度が過ぎたクソガキはやはり近くに住んで居たら迷惑だと思うから、モーテル周辺の大人たちに同情してしまうけれど、
ムーニーたちのあまりに自由でのびのびとした姿を見ていると。とても可愛くてムカつくのに何故か愛おしかった。

私の子供の頃はギリギリドラえもんに出てくるような空き地とか、秘密の探検ができそうな怪しい空き家とかがあって、夕飯時まで近所の友達と思う存分遊んだ記憶が残っているから、ムーニーたちの無限大に広がる世界は自分の過去と重ねて懐かしかったし、親に注意されずにやりたいホーダイやってのける彼女たち羨ましかった。

倫理観とか、常識とか、まともな親としてのかくかくしかじかを語るならば、ここではもう書けないくらいこのヘイリーママはダメ親なので、所謂「真っ当な子供」を育てるのには適していないのかもしれない。
子供の教育はしない、詐欺行為を加担させる、子供を風呂場に閉じ込めて客をとる、そして気に入らない相手の顔色殴るとか見事にステレオタイプのDQN親だと思うから、まわりの大人たちがヘイリーに行った仕打ちは全然理不尽なことではない。

でも、あまりにも目一杯ムーニーの目線で無限大の子供だけの世界を楽しませてもらったせいで、なぜかモヤモヤするのだ。
多分この作品を観た殆どが管理人ボビーと同じ目線であり、ボビーという存在が観る側にバランスを保つとても良い核となってくれたので、この作品にボビーがいてくれて本当に良かった。
答えはない、手を繋いだ2人の近い未来はやはり夢のような世界は待って居ないのだけども、幼い少女たちにはそれしか術がなくて、やがて無限大だった世界が終わりを告げるのだと思うとやっぱ遣る瀬無い。
でも何も方法が思いつかない自分がもどかしかった。

フロリダの燦々と照りつける太陽と、カラフルな家々、世界中から押し寄せる富裕層の観光客と、手に届きそうで届かない夢の国。
光と闇の対比を描くのではなく、闇の中でも光を掴んで精一杯生きている子どもたちの世界を描き、「貧乏がなにさ!クソ食らえっ」ってなビッチすぎる視点が潔良い作品。
ムーニー役のあまりに自然で素晴らしい演技だけでもかなりパワーをもらえた気がしました。