木葉

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法の木葉のレビュー・感想・評価

3.6
一見すると、インスタ映えするような美しく色彩豊かな絵の数々で、何を観に来たんだっけと思う。しかしこれは夢の国の近くで、数数多に存在するプロジェクトと呼ばれる低所得者向け住宅でギリギリの生活を送る貧困層のサバイバルの実態、アメリカの格差社会の過酷な現実を突きつける映画なのだ。
シングルマザーの貧困、ホームレスの悲惨さとは裏腹に子供の屈託ない笑顔と無邪気さに救われる。
悪知恵だけはよく働き、悪ガキ過ぎる母娘に、ちょっとガラ悪過ぎ、ありえないよと突っ込みたくなってしまうが、母はどんなに暴言を吐いても悪びれる様子もなく、娘はあどけなさの中にあるしたたかさで逞しく生き抜く術を見つけたんだと次第に、分かってくる。
彼らにとっては貧困でその日暮らしは、当たり前の状況であり、そこぬけの明るさと意地で強く生きていくしかないのだ。
ポップでカラフルな映像と、アメリカ社会の抱える貧困地獄の対照的温度差に、切なさが倍増し、先の見えない未来に不安の影を落とすが、エモーショナルで意表を突くラストに、心を奪われた。
日々生きている中で、少しは夢を見たって、永遠のような1日があったっていいじゃないか。
母娘を見守る管理人、ウィレムデフォーに癒された。程よい距離を保ち、抑えた演技、厳しい中に実は人情味溢れていて、抜群に素晴らしかった。
木葉

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