TaiRa

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法のTaiRaのレビュー・感想・評価

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空のだだっ広さにアメリカを感じる。『タンジェリン』もそうだった様に夕暮れ空のエモさに打ちのめされる。

前作が全編iPhone撮影だったのに対し、今回は35mm撮影。安モーテル「魔法の城」の鮮やかなパープル、青い空、自然の緑、サブプライムローンで廃墟となったカラフルな戸建ての家々、ファンシーな外観の店々、画面に映るものがみんな可愛らしい。それだから余計に残酷さが際立つ。夢の国のほど近く、廃墟が並ぶ住宅街からほど近く、家のない人々のその日暮らしな生活。子供たちは毎日楽しそう。子供の視線で撮られた景色と引いた視線から撮られた景色。フレームの外に感じる危険にさっぱり気付かない子供たちにヒヤヒヤ。守護天使ボビーの安心感。そして彼の感じる無力感。ウェレム・デフォーはベストアクトを更新したかも。インスタから発掘されたブリア・ヴィネイトのリアリズムはプロの役者が出せるものではないし、ブルックリン・プリンスの無邪気な、動物的とも言える子供性もヘタな子役には出せまい。モーテルの子供たちはみんな素人。今作のネオレアリズモらしさはそういうとこにある。是枝裕和の『誰も知らない』とも通ずる。前作で培ったiPhoneカメラの持つ映画性を最大限に活かしたクライマックスにハッとさせ幕を引く。リアルな映像に切り替わる事で非リアルを感じさせるのは凄い。

子供たちを正面から映したり、歩いてる姿を横位置で見せたりする画が『ピーナッツ』の様にも見えた。ショーン・ベイカー、基本的にカット割りが上手いと思う。
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