小一郎

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法の小一郎のネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

観終わった直後は格差の広がるアメリカの現状を描いた、それ程目新しくないテーマの作品かなと思っていたけれど、シーンを思い出しつつ考えているうちに、じわじわきた。親目線だったからすぐに感じることができなかったけれど、6歳の少女ムーニーの立場になってみると、なんて切ない…。

フロリダのディズニーランドのそばにある安モーテルの1室に、ムーニーと母親のヘイリーが2人で暮らしている。そこは定住する家を失った人たちが住んでいて、ムーニーと同じくらいの子どもたちもたくさんいる。

貧困に苦しむ大人たちとは対照的に、いたずら盛りの子どもたちは無邪気に、元気に、楽しそうに過ごしているように見える。しかしムーニーたちの行動が次第に過激になっていくと親同士の間に亀裂が入る。孤立したヘイリーはムーニーとの生活を維持するために必死だが…。

母親の辛さが伝わってくるのだけれど、実は母を支えているのはムーニーの方だと、最後の方でムーニーがそれまで一切見せてこなかったある表情で気づかされる。

貧しさは大人を子どもにし、子ども大人にする。子どもはわかっていないようで、良くわかっている。自分勝手になっていく親を、子どもは気遣っているのだ。本当なら一番の心の拠り所であり、我がままを聞いてもらいたい親に頼れない子どもたちは、互いに支え合う。しかしそれも親の都合で引き離されてしまう。

ヘイリーのせいで、最後に残った唯一の友達の女の子とも離れ離れになるとき、ムーニーは初めて本心を、親友である彼女に、見せるのだ。そして親友は健気に頑張ってきたムーニーと自分に魔法をかける。親友もムーニーと気持ちは同じ。ほんのひととき、夢を見たっていいじゃないか。

痛いほどの子どもたちの気持ち。モーテルの管理人ボビーが子どもたちに厳しくも、その態度にはどこか優しさや温かさがあるのは、親目線でない彼が子どもたちの内に秘めた本当の気持ち理解しているからだろう。

普段は意識していないけれど改めて考えてみると、子どもを養ってやっているんだという傲慢な気持ちがないわけではないからだろうか、切なさもさることながら胸がチクチクする、そんな映画だった。

●物語(50%×4.5):2.25
・夢の国らしくあの物語が感じられる、痛いだけではない、ちょっと良いなあと思うラスト。上手いなあ。

●演技、演出(30%×4.5):1.35
・母親ヘイリーも良かったけれど、ムーニー役の女の子にうたれた。カットがたくさんあって、大変だったと思うけれど凄いや。

●画、音、音楽(20%×4.5):0.90
・カラフルな映像が夢と現実の対比を際立させる。