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フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法のRavegerのレビュー・感想・評価

4.3
誰も待って無いないかもしれないけど、お・ま・た・せ!(Creepy nuts/助演男優賞より引用)

はいっ...(賢者モード)

最近は諸事情でドタバタしており、映画を観ることが出来ていませんでした。
久しぶりの映画鑑賞となります。

今作のタイトルにある"プロジェクト"とは貧困層向けの住居のこと。
すなわち、タイトルである「フロリダプロジェクト」はフロリダにある貧困層向けの住居というわけだ。
ジョン・ベーカーは、監督、製作、脚本全てをこなした。また、約七億円程の低予算で、ほぼ全編が彼の十八番であるドキュメンタリータッチによりアメリカの貧困層のリアルを写した。

フロリダのディズニー・ワールドの近隣に位置するモーテルには、アパートを借りられない貧困層がその日暮らしをしている。
主に、7歳の少女ムーニー(ブルックリン・キンバリー・プリンス)と彼女のシングルマザーであるヘイリー(ブリア・ヴィネイト)を中心に、そのモーテルで生活するアメリカの貧困層の姿が描かれる。

ほぼ7歳のムーニーの視点で物語が進行する。
彼女からすれば、毎日が冒険。
まさに"センス・オブ・ワンダー"
友達と遊ぶのも、アイスを買う為に他人から金をゴネるのも、母とホテルの前で香水を売りつけるのも、母と水着で売春用の写真を撮るのも...
全部が楽しそうである。
どんなに貧困でも、とても幸せそうに生きていた。
だから、貧困層を描くからといって、ジメジメしていたり、お涙頂戴展開だったりでいうことも無く、逆に、全体的に明るい印象がある。

その理由として、もう一つに色づかいもあるだろう。
モーテルの"紫"を含め、劇中印象的にパステルカラーが多用される。
ムーニーが友達と移動をする時に、意図的に、"オレンジ"、"水色"、また変わった形の幻想的とも言える建物が画面の中心に置かれている。

その一方で、アメリカ社会の現状が垣間見える瞬間にはぞっとした。
子供達に近寄る変態ジジイ、毎日飛行する軍機、娘がいる中での生計を立てる為の売春行為...
これらがシームレスに日常に溶け込んでいるのが、恐ろしいところである。

ラスト・シーンで、ムーニーは気付き始める。きっと大好きなお母さんは悪いことをしていて、もう大好きな友達とも一生会えなくなることを、そしてこれが現実だということを...
親友であるジャンシー(ヴァレリア・コット)
に別れを告げようとするのだが...
今までムーニーに連れ回された彼女の方が、ムーニーを新しい世界に連れていった。
彼女達はこれから二度と会うことはないかもしれない、
それでも、彼女達にとって最後の一時はまさしく夢の国のようであったのではないか。
ビタースイートな幕切れであった。

P.S
最後のシーンだけiPhoneでの撮影だそうです。

ウィレム・デフォーはグリーンゴブリンの印象しかないけど、めちゃくちゃ良い人やってました。

ヘイリーは社会的に見て母親失格かも知れないけど、ムーニーにとっては最高の母親だったと思います。
あの環境下で、娘に当たったりしていないし、何より二人はとても楽しそうに生活していたので...
あんなお母さんが良かったなぁ笑
なんつて
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