チーズマン

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法のチーズマンのレビュー・感想・評価

4.1
“世界最大の夢の国”フロリダ・ディズニーワールドのすぐ外側、安モーテルでその日暮らしをしている母親ヘイリーとその娘ムーニー。
この安モーテルで暮らす人々の生活をムーニーという6歳の女の子の視点から描く作品。


子供の想像力とはまるで魔法のようなもので、シングルマザーの貧困生活も楽しみに満ち溢れた豊かな世界に変わる。
たとえ本物のディズニーランドには行ったことはなくても、ムーニーにとってはこの“マジック・キャッスル”という名の安モーテルとその周りのパステルカラーの世界はとてもキラキラしていて、友達と冒険する様子はまるでディズニーランドのようだ。
ムーニーから見たウェレム・デフォー演じるモーテルの管理人ボビーはさながら魔法使いの先生で、停電を直すシーンはすごい好きだった。

カメラマンが腰痛に耐えながら(かどうかは知らんけど)撮影したムーニー目線のローアングルのおかげもあって、子供の頃は目に映る世界がとても大きかったことを観客にも思い出させてくれる。

しかし、この映画は想像力さえあれば貧困も楽しく乗り越えられるといったことでは終わらない。

これはそういう話ではない。


次第に貧困に追い詰められていく生活に、ムーニーの魔法も少しずつ解けていく。
魔法使いの先生は、安モーテルのしがない雇われ管理人。
新婚旅行でミスって安モーテルに訪れた夫婦は「こんなの本物じゃない」と言う。
カメラマンが腰痛に耐えることは次第に減っていく。
そして遂に魔法が解け過酷な現実を直視するしかなくなった時、さあムーニーはどうする?という所まで描く。

この母娘は似ている。
ムーニーは延び延びと活発で明るく正に天真爛漫な魅力があり、それは母親ヘイリーにも同じくそのまま当てはまる。
そして、ムーニーの天真爛漫さが自らの生活を追い詰めるキッカケも作ってしまう、皮肉なことにそれも母親ヘイリーにそのまま当てはまる。
似た者同士の母娘、はっきり言って母親ヘイリーはまだまだ中身が子供なのだ。
しかしこの母娘の間には確かに愛がある。
その上で、この映画は、愛情と子供を育てる能力は必ずしも同じものではないとやはり突き付けてくる。
ヘイリーは明らかに現状子供を育てる能力が無い。

となると結局は今作のような展開になるか、又は母親と同じような人生を歩むかしかない。

まだ6歳の女の子の世界から魔法が解かれてしまうのはとても過酷、今までキラキラと見えていたものが実は厳しい現実の産物だったと嫌でも知って生きていくことになるわけでしょう?
でもそんな現実には背を向けとことん真逆へ走るマジカルエンドと呼ばれるラスト、観た人それぞれに捉え方があると思うけど個人的には“ネバーランドへの片道切符”に思えて、そこに複雑な心境と無視できない重いものを感じた。


色々と考えさせられる。
子役も大人もとにかく役者の演技が光る良い作品だった。