賽の河原

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法の賽の河原のレビュー・感想・評価

3.2
「ネットカフェ難民」みたいなのは日本で話題になって久しいですけど、アメリカではサブプライムローン問題以降、「モーテル難民」がいるんですね。本作はそういうモーテル難民のシングルマザーと子供を一種、ドキュメンタリックに撮ってて興味深かったですね。
フロリダの抜けのいい青空と、「マジック・キャッスル」なる名前のモーテル、カメラの視点は子供の目線に合わせられ、あたかも何か綺麗な世界が描かれているようで、起きている事象は絶望的にダメダメという残酷かつ映画的な対比が面白かったですね。絶望的にダメダメな状況なんだから暗ーくジトーッと撮ることを考えるのが普通なのに明るく綺麗に撮ってるからこそ際立つ厳しさが新鮮ですよ。
あとは子役の演技が素晴らしいですよね。前職で結構たくさん「躾のなってないクソガキ」みたいなのは見る機会ありましたけど、ずーっと落ち着きなくチャカチャカしてたり、なんてことないことでギャーギャー騒いでいて、それでいて窘めようとしようにも、「規範」とか「論理」とかが通じない「半分動物のまま感」がすげーリアルでしたよ。食べるものとかの演出もリアルですよね。
一方でそういうクソガキって、意外に信じられないくらい残酷だったりしたりもするんで、そういう子どもの邪悪さとかを漂白して撮るのはなんだかなぁと思わないでもなかったですね。「女の人が泣く前云々」とか「ここが好きなのは倒れても育ってるから云々」みたいなドキッとするようなセリフをガキが言うんですけど、「映画的には分かるが、クソガキは実際そんなにピュア民でもなんでもねえよ」っていう。
とにかく子どもの育つ環境として、この映画が描く世界は「美しいけど修羅の国」っていう感じですし、もう親にしても「子供が大人になっただけ」というにも憚られるレベルのDQNな親でもう「本当に救いようねえな...」って感じですし、終盤の展開からして「まあそれもやむなしやろ...」っていう感じなんですけど、舞台立てを非常にうまく使ったもはや実に映画的な、いわば「実際には起こりえないことが映画というフィクションの中で映像になる」というラストシーンからスパッとエンドロールっていうのも救いがあるように見えて全く救いのない、しかも「彼女たちはどんな表情をしているんだろう?」「果たして彼女が今後幸福に生きていくことは可能であろうか」という余白もあって最高でしたね。
観た感想として「こりゃあ大変だ...けど他にどうすんねん...」っていう後味で「おもしろーい!」っていう映画ではないですけど、社会やその仕組みに関して考えさせるパワーが非常にある、それでいて映画的な演出も優れているという映画でしたね。