アイリーン

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法のアイリーンのレビュー・感想・評価

4.1
教育がないものには高収入は望めない。カフェで週6日、朝から晩までキッチンにいるか、ホールにいて、働きづめでも手に入る金は僅かだ。まとまった金を手に入れるには、ヤバいことに手を出す以外に手立てがない。ちゃんとしたところに、住まいなんか借りられない。一度堕ちたら容易に這い上がれない。アメリカンドリームなんて、幻想だ。家庭環境が悪かったり、勉強ができなかったりするのは、全部自分のせいなんだろうか。それでも、我が子を愛する心は持っていて、自分の子供には幸せになって欲しいと思っている人がいる。どこかで歯車は狂い、それを治してくれるシステムは存在しない。

路上のホームレスを見ても眉をひそめるだけなのに、駅で老人が転んでもしらんふりなのに、貧しくて学校に行けない子供がいる行政なのに選挙にすら行かないのに、きちんと背広を着て、糊の効いたワイシャツに新しいネクタイを締めて、高そうなブリーフケースを持って歩いているだけで、自分はまともで、人生に失敗した人達は、敗北者で片付けてしまう。まともじゃないのは、誰なんだろう。

共鳴する無垢な魂は何処へ行くのだろうか。魔法の王国にあるお城は、あの子達に手を差し伸べてくれるのだろうか?

飲み差しのウォッカのグラスから視線を移して窓に目をやれば、そこには血走った眼をしたくたびれた中年男が映っているばかりだ。鑑賞後の怒りと諦めが入り交じった虚脱感が蘇ってくる。嗚呼、明日も宿酔いなんだろうな、と、ただボンヤリと思う。

At the end of the day, we realize that there is no place like paradise.