海老

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法の海老のレビュー・感想・評価

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たまに出会います。
スコアを付けていいのか分からない作品。

色々と思うところがあり過ぎて、観た直後は考えがまとまらない。それくらいに、胸を抉られる物語。映画を観たのは金曜なのに、レビューが書けなかった。

貧困の生活の中にあっても無垢な子供が見る世界は夢に溢れている。…そんな温もりで済んだらどんなに楽か。
善良な市民が行政によって迫害される。…そんな「誰かのせい」で済んだらどんなに楽か。
親が親だからこんなことになる。…そんな個人の責任と押し付けて済んだらどんなに楽か。

この物語には容赦がない。

幼いムーニーが過ごす世界は、綺麗なパステルカラーに溢れていて、取り留めのない環境も全てが遊園地であり、冒険に溢れています。たとえそれが貧困層の集う安モーテルであったとしても、子供の眼に映っているのはそれが全て。別の何かと比較して悲観する事もないし、できない。
友達と一緒にケラケラと笑う姿は可愛らしいが、その行動が悪ガキの限度を超えているのは誰の目にも明らか。

そんなムーニーを母親ヘイリーは絶対に叱らない。悪いことを教えるわけでもない。かと言って育児を完全に放棄しているのかと言えば、そういうわけでもない。何せ、雨の中を親子でふざけ合い、笑い合う姿はとても眩しいし、ムーニー自身が母親を好いているのも分かる。

ではヘイリーは寛容な人間なのか。
全くもってそんな事もない。日頃の感謝も忘れ、癇癪に身を任せて汚い罵声を浴びせ、直接的・間接的に暴力に訴える。思い通りにならなければヒステリーを起こす様子はモンスターそのもの。

劇中、そんなヘイリーに、
「そんなんだから貧困なんだ」と罵るセリフがあります。

僕はその言葉に同調してしまった。

後から気付いた時に、この物語のどうしようもなさを思い知らされ、抉られました。
ヘイリーは、社会不適合者として苦しみ、負のスパイラルから抜け出せなくなった末路に立つ人物。それを決めたのは世の中であり、僕自身も世の中の一人である事。決して他人事じゃない事実に目を背けたくなる。
何しろ、僕はヘイリーを救いたいとは考えられないし、どうしたら良いのかも分からない。気の毒に思う以外に、何も出来ない。ヘイリーがムーニーに愛情を注いでいる姿を見て尚、何も出来ない。


子供の目線にも、忍び寄ってくる破滅の輪郭が明るみになるたび、締め付けられるような想いでした。

ヘイリーの絞り出すような「ファックユー」は、誰に向けられた叫びだったか。
夢の国が少女たちを救う事はあるのだろうか。

容赦のない、逃げ場の無いメッセージを突き刺され、抉られ、決して忘れられないであろう作品となりました。それが良い意味か悪い意味かは、今はまだ整理がつきません。