けまろう

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法のけまろうのネタバレレビュー・内容・結末

4.7

このレビューはネタバレを含みます

『フロリダ・プロジェクト』鑑賞。青春映画大好きだし観ようと思いきやとんでもなく重い話。
前半はカラフルな世界観で子供たちの支点を中心にした悪ガキのイタズラ話だが、後半はシングルマザーのヘイリーが貧窮していった挙句に娘のムーニーと引き離されてしまうという話。
ディズニーワールドに代表されるようなフロリダの夢のような世界観が現れているのと同時に「ヒドゥン・ホームレス」というモーテル暮らしのホームレスに焦点を当てた作品。子供の世界と大人の社会が奇妙な融合を見せている。
親のヘイリーは、どこか大人になりきれない母親。ムーニーの世界観を感じさせるカラフルな髪の色は、ヘイリーの未熟さも象徴しているようだ。彼女は真っ当なお金の稼ぎ方を知らない。パチモンの香水を金持ちに売りつけ、人のモノを盗んで転売する。挙げ句の果てに、子供と住む家で風俗の仕事も始めてしまう。しかし、ムーニーだけは手放さない。大人としての生き方を知らないが、母親としての愛を備えた人物だ。
そして主役のムーニー。とにかくその破天荒なキャラクターが魅力的。子供の憎らしさと可愛らしさが並存した、あの子供特有のソレを見事に演じている。贅沢な遊びはできないが、子供たちを率いてモーテル周辺を散策。イタズラはお手の物で、他人の親からお金をせびるという高等テクニックも見せる。親譲りのスラングを流暢に使いこなす姿には思わず笑みが零れてしまう。
そんな無敵にも見えるムーニーの姿に、内気だったジャンシーも惹かれていく。徐々にスラングを覚えていく姿にもクスリと笑えてしまうのだが、このジャンシーがもう最後すべて持ってくのが良い!今までムーニーについていくだけだったジャンシーが、最後遠くへ行かなければならず初めて涙を見せるムーニーを『ディズニーワールド』に連れ出すのだ。こんな終わり方卑怯でしょう、と思いつつも心の中で拍手喝采を送ってしまう。
ジャンシーがムーニーを連れ出した世界は決してそれまでのカラフルな世界ではないが、瞬間瞬間にシャッターが切られるようなコマ送りの演出が入る。それはムーニーにとって新しい世界で、記憶に残る「カラフル」な世界だったのだろう。
劇中ムーニーの印象的なセリフがある。ジャンシーと倒木の上で配給されたパンを食べている際、「なんでこの木が好きかわかる?」とジャンシーに問いた答え。「倒れても成長してるから」だという。きっと、ムーニーもヘイリーも、離れ離れになった後成長して一緒に暮らしていけるのだろうと、確信を持てるセリフだった。