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フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法のみのレビュー・感想・評価

4.2
見終わった直後よりも後から噛み締めて味の出る作品だった。

大人の視点ではどうしようもなく抜け出しようもない、辛く身動きの取れない毎日、それが子供の目というフィルターを通すといつだって眩しく煌めいている。それは決して虚構ではなく、"彼らにとっての"現実だということが、子供の目線で捉えられる映像からひしひしと伝わってくる。
悲しさも楽しさも辛さも喜びもすべては別々のものとして切り離されてはおらず、全く同じ出来事の表裏一体であり、すべてが正しい現実。『スリービルボード』で描かれたような多面性とはまた違う、視点の違いによる「見え方」の見せ方がとても素晴らしい。

母親のヘイリーは、大人、というかいわゆる世間から見ると自分勝手で育ちの悪い娘だが、実の娘であるムーニーの目には優しく愛情たっぷりの母親として見えている。これはいずれも間違いではなく真実であることもとてもよくわかる。ヘイリーが子育てを重視していないわけではなく、気軽な気持ちで客を取っているわけでもないこともきちんと描かれている。

その中でもウィレム・デフォー演じる支配人のボビーが、大人と子供どちらの視点からみても「厳しく優しい近所のおじさん」であることがめちゃくちゃ目頭を熱くさせる……。ウィレム・デフォーという人そのものの佇まいが役柄に説得力を与えすぎである……泣く……。めちゃくちゃ愛がでかい……。
モーテルに暮らす子供たち、ひいては住人たちに愛情を抱きながらも、たかが支配人という立場ゆえそれを存分に注ぐことができないというもどかしさ。ただし自分の手の届く範囲では絶対に彼らを守ろうとする、哀しみ込みの愛。それをすべて表現するかのようなウィレム・デフォーの後頭部カットを差し込んでくれたことに感謝。