安モーテルでその日暮らしの生活をする母親とその娘の話。
映画全体に広がる鮮やかなパステルカラーと時折見せる楽しげな子供目線からの視点。その裏にある汚い部分。
ひさびさに心をえぐられる一本でした。
この映画は決して同情だとか共感などするものではなく「ただ知って欲しい」それだけの事のような気がします。
確かにこの母親は最低でどうしようもない人です。それでも子供の為になんとか懸命に生きようとしていました。
逃げるわけでもなく自ら命を絶つわけでもなくなんとかして生き抜こうとしていました。それは全て自分の為というより子供の為に。
生きるのに器用な人もいれば不器用な人もいる。
自分も小さい頃はそれが理解出来ませんでした。
小さい頃、あんなどうしようもない大人になんかなるはずがない。何故そんな風になったのか?という事が全く理解が出来ませんでした。
しかし、思ったより現実は冷たくて痛い。
社会に1人で出てみたらこんなにも普通に生きる事が難しい事だとは思いませんでした。
ただ生きるだけがこんなにも難しい事だとは思いませんでした。
上手く生きれるはずでした。
この母親のように自分は不器用な人間でした。
この映画では、そんな不器用な人間を支える人間であるウィレム・デフォーが演じた雇われ支配人がいました。しかし、そんな良い人がいても全く状況は変わりませんでした。現実は冷たくて痛い。どうしようもならなかった。
じゃあ何やってもいいのか?
と言うわけではありません。彼女の行った愚行は決して褒められるものではありません。
しかし、世の中には良い悪いだけで判断出来ない事もあります。
倫理を超えた先にあるものというのがあります。
この映画はそれを「ただ知って欲しい」というだけの事だと思います。
表があれば裏もある。
光があれば影もある。
同情だとか共感だとかそういう事じゃなくそう言った部分を見て欲しいだけなんだと思います。
ラスト夢の国で家族が楽しそうにしている中で走り抜ける2人の姿は現実を突きつけられているようで辛かったです。