たつかわ

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法のたつかわのレビュー・感想・評価

3.7
魔法は解ける

本作は、是枝監督作品「誰も知らない」を参考にしている。

誰も住んでいない一軒屋が沢山あるなかで、「マジックキングダム」というモーテルに主人公家族(母子家庭)は住んでいる。アンドリュー・ガーフィールド主演の「ドリーム ホーム」のようなサブプライム・ショックにより家を失ったために、モーテルに住んでいるように見えない。本作の主人公家族は、親の若き日の誤りにより貧困に陥ったケースと思われる。

序盤から子供の数々のイタズラと、そのイタズラで被害を受けた他のモーテルの住民(主に管理人)から、子供を叱ってほしいと言われても、親は叱ることはない。ここら辺は賛否あるかもしれない。

ポスターのビジュアルやフロリダの風景とは大きく違い本当に冷たくて、暗い作品。「私はダニエルブレイク」の母子家庭にはダニエルブレイクがいたが、本作にはいない。頼る人が全くいない。ウイリアム・デフォー演じる管理人は、あくまでも管理人であり、彼には上司がいて、命令される立場の人間であり、それ以上でもそれ以下でもない。後半に「万引き家族」の高良健吾と池脇千鶴のように、正しいことを言う人間が登場し、ますます追い詰められる。

ラストシーンは、マジックエンドといわれているが、魔法はその日にしか効果が無い。明日がくれば、現実が待っている。
たつかわ

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