emily

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法のemilyのレビュー・感想・評価

4.8
定住する家を失った6歳の少女ムニーと若い母親。その日暮らしでフロリダの安モーテルで暮らしてる。ムニーは近所の子供達と楽しくやってるが、いたずらが過ぎるので時に管理人から厳しく注意されていた。しかしある事件をきっかけにそんな日々も変わっていく。


カラフルな色彩、淡い光、室内灯のオレンジ、太陽の眩し過ぎる光に、ポップなお店やウォールアートが子供達に寄り添う。抜群の配置と色使いが美しい。太陽との距離が近く、何気ない日々をドキュメンタリータッチで描き、等身大の子供達の姿がキラキラと光り輝く。

貧しいから不幸なわけではない。その中でいかに幸せを感じられるかが大事だ。何もないしお金もない、でも友達がいる、母親がいる。どんなことにも遊びを生み出す子供達の無限の力。その中で笑顔いっぱいで、全身で幸せを感じているのだ。

一方母親は貧困に苦しめられなんとか家賃を払うためあらゆる手段に出る。しかしそのシーンが映ることはなく、子供の時点で目線で描かれているので、汚い部分は一切映らない。

体を売ったり盗みを働いたりしてる母親だが、子供と一緒の時は笑顔だし、ムーニーに対して怒ることもない。二人は楽しそうだが、それは親としてなのか?それとも友達としてなのか?子供にほぼ干渉しないから、怒ることも注意することもないのだ。

二人の関係は親子より友達で、ムーニーのことも尊重している。当然幸せは続かない。二人の暮らしは仮初めのものでやりたいことだけをやってきたもの。大人になってない母親と、まだ子供のムーニー。いつまでも夢の世界で暮らすわけにはいかないのだ。夢はいつか終わり、成長する時がくる。

しかしまだムーニーは子供のままでいい。夢を見たままでいい。だって子供なんだから。たとえそのあと辛い現実があっても、夢がないと人は生きていけない。畳み掛けるラスト、夢見た場所、ここには全てがある。ずっと続くものなんてない。だからこそ夢が美しく楽しいのだ。
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