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フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法のhi1oakiのレビュー・感想・評価

4.1
陽性な鬱映画。コメディとして受け取れる人もいるだろうし、サスペンス/ホラーとしか思えない人もいるでしょう。
全体がケアベアとかマイリトルポニー等のアメリカの子供のおもちゃみたいな色彩で構成された映画。そこから連想される幼児性は子供達ではなく、最後まで同情の余地が無い母親ヘイリーを象徴している。
貧困層であることを考慮したとしても、あまりにも無責任で道理が通じない。すぐ悪態をつき、都合の悪い事ははぐらかし、自分本位でコミュニケーションなんて取れない。似たような境遇ながらも仕事をして子供の行動にも目を配り、貧困からなんとか抜け出そうとしているアシュリーがいる事で、ヘイリーの不快さが一層際立つ。
子供達の描写も含めて観ていてひたすらイライラさせられ嫌な気持ちになるのは、巧みな演出にどっぷり魅せられているからでしょう。
この作品の面白さは、ボビーというちょっとした聖人のような人物の助力の成果で“わたし心を入れ替えてがんばるわ!”みたいになる話じゃない所。
“プロジェクト”は低所得者向けの住居のことなんだけど、“フロリダ・プロジェクト”というのはディズニーワールドの開発段階の名称とのこと。耳障りな甲高い声で奇声をあげる子供達と本質はなんら変わらないヘイリーは“夢の国”に囚われて抜け出せない。きっとこの後も変わることもないであろう事を“最後の日”の朝食が象徴してる。怖い。
そして、そこからの終わり方がまた凄い問題作。
『万引き家族』とは似て非なる“貧困”と“家族”の物語。こっちの方が重い。
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