rage30

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法のrage30のネタバレレビュー・内容・結末

-

このレビューはネタバレを含みます

「隠れホームレス」と呼ばれる人達の日常を子供の視点から、しかも、カラフルでポップな世界観で描いたところが斬新な作品でした。

出てくる子供達は、生意気で、不潔で、憎々しい程に太々しい。
厳しい環境でも楽しんで生きる姿勢にはタフさを感じるものの、正直、あまり可愛いとは思わなかったかな。笑
でも、子供を大人にとって都合の良い存在として描かないところが、リアルだな~と思ったし、「此の親にして此の子あり」といった感じで、親の性格を子供がトレースしてるのも面白かったです。

母親のヘイリーは子供目線になって一緒に遊んだりもするから、子供に懐かれるのは、すごくよく分かる。
でも、それは逆に、彼女の幼稚性や責任感のなさを表してもいて、彼女自身もまだ子供なんですよね。
ムーニーの生活や安全よりも、自分の感情を優先させてしまい、ムーニーを危険に晒してしまう事も多々あり…。
やっぱり親になる以上は努力して大人になる必要があるんだなと思いました。

映画の後半、親子は離れ離れにさせられます。
あれだけ見ると、「福祉の人間は酷い!」と思いがちですが、ヘイリーが今後も安定して子供の面倒を見続けられるとは思えません。
そして、親がネグレクトを起こすとどうなるか…というのは、是枝監督の『誰も知らない』を見れば分かると思うので、興味があれば見てみて下さい。

ヘイリーは褒められた親ではないし、ムーニーも憎たらしいガキです。
でも、彼らの事が嫌いか?と問われると、決してそうではありません。
ヘイリーはヘイリーなりに、ムーニーとの生活を守ろうとしていたし、ムーニーもムーニーなりに、厳しい現実に負けない様に生きてきた。
本作は貧困だからと言って、彼女達の闇だけを描くのではなく、光も描いている…だからこそ、彼女達の心に寄り添う事が出来るのでしょう。

ラストに用意された展開。
個人的には『ラ・ラ・ランド』に近いフィーリングを抱きました。
現実は違うかもしれないけど、せめて夢の中では、映画の中では…という願いの具現化。
それと同時に、あれはムーニー達の掛け替えのない日々を象徴していたのかもしれません。
テーマパークの外側であっても、内側であっても、彼女達の思い出と友情の輝きが変わる事はないのです。
rage30

rage30