名画座二本立て
併映「悲しみに、こんにちは」
アメリカ・フロリダ州。
ディズニーワールドの近くでは、
母親ヘイリーと6歳の娘ムーニーが「マジック・キャッスル」という安モーテルでその日暮らしをしている。
ムーニーは生意気盛りでイタズラばかり。ヘイリーは躾を完全に放棄。
明るいフロリダの太陽の下、ポップというより、人工甘味料たっぷりのお菓子のような建物で刹那的に暮らしている。
段々とその生活は破綻していく。
ヘイリーはムーニーのイタズラを叱ってあげてほしかった。親が叱らないことで、子供は罪悪感を持たずイタズラがエスカレートしてしまう。
併映の「悲しみに、こんにちは」の叔母はしっかりと叱ってくれたので、余計にそう思う。
ヘイリーが決してムーニーに手を上げないところにはホッとしたが。
代わりにモーテルの管理人ボビー(ウィリアム・デフォー)が、子供達を叱り見守ってくれている。
ボビーがいなかったら、このモーテル崩壊しているんじゃないだろうか。
そんなボビーも自身の家庭は上手くいってないよう。
印象に残ったシーン
ムーニーの楽しそうな入浴シーン。いやに何回も出てくるな〜、と思っていたが、そのシーンの意味を知った時のショック。
ムーニーがラストで友達のジャンシーに感情を露わにする。今まで見ないようにしていた現実を直視しなくてはいけなくなる、もう甘いお菓子の家にはいられない、というムーニーの感情の爆発に、初めて本音を見た気がした。この時のムーニー役のブルックリン・プリンスの演技が凄い!
この後のラストは色々解釈があるようだが、私は甘い夢を完結させるための到達点であり、ここから先は甘くない現実だよ、と言われている気がした。
「悲しみに、こんにちは」のラストと見比べてほしい。同じ感情の爆発でも意味するところは全く違う。
今回、この二本立てを企画してくれたキネカ大森に感謝したい。