夢と魔法の国フロリダ・ディズニーワールドのすぐそばでは、安モーテルでギリギリの生活を送っている人々がいる。
タイトルやポスターではいかにもロマンチックな感動映画という雰囲気を漂わせていますが、実際はシビアな現実を突きつけるような作品でした。
物語の陰には常に「ディズニーワールド」という夢に満ちた世界の存在がちらつき、現実に直面する主人公たちの境遇との対比になっているのがなんともシニカル。
この映画のなによりも素晴らしいところが、色彩豊かな映像の中で描かれる真実味に溢れた人間模様です。
無邪気にはしゃいでいる子どもたちの姿がものすごくリアルで、本当に日常を垣間見ているような気分になりました。
その母親であるヘイリーという女性がまた強烈なキャラクターで、はっきり言って母親失格と言わざるを得ません。
しかしながら、このような境遇に追い込まれた要因のひとつが格差と不況による困窮にあるというのもまた事実であり、一概に批判できるかというと難しいところです。
そしてその親子を見守る管理人(ウィレム・デフォー)の演技がまた良い。
厳しさの中にある優しさや深入りできないもどかしさといった様々な感情が伝わってきて、すごく好きになれるキャラクターでした。
現実の厳しさをただただ悲観的に描くのではなく、無垢で無邪気な子どもたちの視点から情感たっぷりに映すことによって、世界の鮮やかさやどうにもならない切なさを一味違った角度から感じさせてくれる美しい作品でした。
ラストシーンは結構ビックリ。