Eri

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法のEriのレビュー・感想・評価

3.7
万引き家族をみたので、超格差社会&子役が自然すぎてびっくりする映画シリーズで続けてみた

あまりにもナチュラルに子供すぎて若干イラつくくらいのリアル子供がここまで画面に映り続ける映画がこれまであったでしょうか?笑

子供たちが自然すぎてドキュメンタリーかよってくらいなんだけど、でもこれは完全に劇映画としか言いようがない仕上がりで、これは監督の才能なんでしょう、きっと。

ポップでカラフルな画面に映し出される子供の目線から見た現実は、夏休みのテンションあがっちゃう楽しい出来事の連続で、お母さんは(たまにキレるしずっと構ってくれるわけじゃ無いけど)最高に楽しいママで、全力で遊んでくれる、友達もいるし、不満なんかない!たのしい!って感じ

でも、そこにチラチラ見え隠れするハードすぎる現実があって。(ジョジョラビットとかね。そういう系ね。そういう描写に圧倒的弱い私)
母親になるには若すぎるというか、全く大人になれていないヘイリーのダメなとこも私たち観客には見えてしまう。

でも、ヘイリーは最低レベルではあるけど、なんとか親子2人で生きていけるような努力をしているし、第一、ここでどんなに頑張ったところで、モーテル暮らしの現実が、簡単に変えられるの??っていうことも私達には見えちゃう。(まあ出ていく人の描写もあるけどね)

抜け出す努力をしてないと彼女を責めるのは簡単だけど、まずそんな状況になるまでヘイリーのような人を掬い上げることのできない社会の問題も少なからずあるわけで。

でもこの映画はそれを声高に主張するわけじゃなくて、子供の目線を通して、その生活から抜け出せないサイクルを見せてくる。
そして、じゃあどうすればよかったの?悪い母親なのが全部悪い?この暮らしも全部全部個人の責任だっていうわけ??っていう、その怒りが、唯一明確に表現されてるのがヘイリーの叫びだと思う。

加えていうなら、ウィレムデフォー(超絶素晴らしいですね!この人がいなかったら全然違う映画になっちゃってたかも!)の演じてる管理人の、一定の距離を保ちながら、子供たちやヘイリーを見守る姿勢は、理想的な大人かもしれない。でも、そんな彼でさえ、この子たちに何か明るい未来をもたらすことはできない。あくまで他人だから。見守って、できる範囲で脅威を退けるくらいしかできない。現実の私たちもそんなものでしょ。つらいね。

誰かが何千ドルも使うディズニーワールドのすぐそばにはこんな現実がある。
ムーニーたちモーテルに暮らす子供たちが本物のディズニーランドに行ったらどんな顔をするんだろうか。

ラスト、現実から全力で逃げて行った場所を思うと、そこに込められた皮肉と切実さに胸が痛みました。
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