ふじこ

最後の望みのふじこのネタバレレビュー・内容・結末

最後の望み(2014年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

会った事のない父に面会する為に精神病院を訪れる青年アドラー。父は入院してから25年経つと言う。
面会室へ案内され、先に医師と話がしたいと申し出る。
煙草を吸おうとするアドラーに全面禁煙なのと忠告して看護師は去って行く。

そして足音がして、眼鏡を掛けた老齢の男性が入ってくる。
バイス先生、どうも と握手を交わし、席に座って話し出す。
父と面会する前に、先生の意見を聞きたい と。
緊張のためか煙草を火を付けるアドラーに、いいかな?堂々と吸えば問題ない と煙草を貰う。

自分で決断する前に、父を知っている人と話がしたかった。
海軍将校の父は自分が生まれる直前に任務中に事故死したと聞いていた。
僕の出生の秘密や父が7年間州刑務所にいた事、それからここに収容された事。
双極性障害だと、2週間前に全てを知った。

2年間母を介護していたが、死期を悟った母に全てを告げられた。
父は鉄道安全監査官の仕事をしており、出張が多かった。
父には弟がいて、胡散臭いがハンサムで女の扱いが上手かった。
叔父がいた事すら初耳だった、父との間に起きた事も。父が叔父を殺した。

父は母と叔父の関係を疑っていた。そして嫉妬心からある日叔父の首を締めて殺した。
その数時間後に父は逮捕され、連行されて行った。

ずっと嘘を吐かれていて辛かっただろうと言う男に、
でも母はいつか僕に話そうと思っていたはず。
母は重荷を背負い続けて来た、僕が生まれて32年間男の影もなかった と答える。

母は父の面会へ行ったが、浮気を疑っていた父は面会を拒否。父は確信していた、僕の実父は叔父だと。
父に会って疑念を晴らすと母に約束したんです。
"裏切っていない""あなたが父親だ"と。

それで君はここに来た、お母さんのために。
お父さんの方も息子に会える、実の息子にね。
実は君に…
と言い掛けた男を遮り、まだ続きが と語るアドラー。

死に際に母が言った、"約束を果たして""お父さんに会って息子だと伝えて"
"息子だという事実が生きる希望を与える""お父さんの命を救える"

"でも本当はお父さんが正しいの"
"叔父さんが実父よ"

これが真相です。

立ち上がり、降り出した雨を窓から眺める男。

僕には救える、ここにいる"父"を。母が死ぬまで愛し続けた男を。母に約束した、遺言を守ると。
でも真実を告げ…息子ではないと言うべきか。
僕の実父を奪った男だ。その方が正しい。簡単な事だ、真実を伝えるだけ。

お母さんの遺言に従いなさい、お父さんはきっと…耐えられない。
話が出来て良かったよ、アドラーさん と手を握って男は出て行く。

すっかり暗くなった部屋でまだ何かを考えている様子のアドラーに気付き、電気を点ける看護師。
父を待ってる と告げると、もう会ったでしょ?さっきすれ違った と言う。
先生と話せなくて残念ね。

その時部屋の外で何かの機会が警告音を発するのと、何人もの看護師が走って行くのが見える。
そのまま何も言わずに腕時計をそっと机に置き、出来るだけ何も視界に入れないように病院を出て雨の中車に乗り込み、荒い息を吐いているようにも、泣いているようにも見えるけれど雨がガラスを伝って影しか観えないまま終わる。


最初の看護師との会話で、写真も見たことない=顔を知らない、
アドラーがしている古い腕時計に興味を抱き、家宝かね?と尋ねる、
煙草を咎められるが、医師であるはずの男は止めないどころか吸いたがる、
辺りでもう既に示唆されているのよね。老人が自ら医師だとは名乗っていないし。タイミング良く入ってきただけで。
誰が悪いって言ったらそらもう、まぁ母親と叔父だろうと思う。でも殺されていいかって言うとね…。
ただ◯◯は魂の殺人 みたいな言い回しを聞くと、この父親にとっては息子が実子ではなく妻が弟に寝取られた事がそれに当たる出来事だったんじゃないかなぁと想像する事は出来る。
わたしは女だからこれよりももっと確率の低い、病院で取り違えられました…って場合しか実子ではない場合を想像し辛いんだけど、この父親は以前から妻と弟を怪しんでいた下地があって、何処でこの子俺の子じゃないんじゃない…?って思ったんだろうなあ。出張から1日早く帰ってきたら何故か弟が家に居たとか?
怪しんでた、って事だから決定的なものは目撃していないのかも知れないけど、全体的に怪しい何かをこう…嘘吐いてない?的な雰囲気を感じていたのかしらね。
今でこそだけど、子供が出生したら全員DNA鑑定をすれば良いのに。間違いなく自分の子である、って確信があるのとないのとじゃ大違いだと思うし。ついでに遺伝子検査でなりやすい病気とかも調べておけるし。不貞をしている人以外誰も損しないと思うんだけどなあ。

中々重たくて息苦しく、いい作品だった。
ふじこ

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