まりぃくりすてぃ

祝福~オラとニコデムの家~のまりぃくりすてぃのレビュー・感想・評価

3.3
かなり演技させてる、いわゆる“汚れたドキュメンタリー”であることは、序盤のうちに見抜ける。でも、仮にヤラセ度が5割超えだとしても、下手な劇映画よりもよっぽど面白いしダレてない。
ガンバる不機嫌少女オラが、そういうわけでドキュの中心人物と“主演女優“をガミガミガミガミと兼ね、「オラなしではいられない」感を作品世界が一定の魅力をもって訴えかけつづける。
父親の喫煙頻度、誇張されてない?
母親の胸チラを執拗に撮ったり。
発達障害の弟ニコデムも、数回の哲学的セリフで私たちにサービス。

演出演出で家族の乱雑風景を飾り立てておいて、ラストシーンだけは極端に印象薄い日常場面へと落下。もっと“結末感”を出せば喜ばれるのは確実なのに、「フィクションではないってことで。一応これ、ドキュメンタリー映画ってことで」と言いたいがために、体裁重視でこんな地味な終わり方にしたのだ。あざとい。

とっくの昔──1990年にイランのキアロスタミ監督が『クローズアップ』という大傑作において、「現実」「作為」「真実」の三者を奇蹟の技で完全輪舞させた。人間の尊厳(と映画の無限なる効能)を守るための嘘、の美しさをキアロスタミ経由でたまたま知るわが目には、今作ラストのあざとさは「21世紀にもなってこんなヨチヨチ歩きみたいな取り繕い方をする話法はあまりよくない」と映る。

ただ、嘘の多さを取り繕う『オラとニコデムの家』が、図らずも途中途中で色濃く滲ませちゃった別の事実がある。「今なおポーランド社会がいかにカトリックに支配されているか」が、隠しようもなく露(あらわ)れ出てる。当作品は、それを記録し伝えるという意味においてのみ、2016年時点での正真正銘の純粋ドキュメンタリー映画だと思う。



[恵比寿・東京都写真美術館ホール “ポーランド映画祭”]
※来日した映画ジャーナリストによるトークつき。「本物のドキュメンタリー映画というものは死んでしまった」という著名監督ボグダン・ジヴォルスキ氏の言葉が引用されるなど、閉塞した面もある現在のポーランドの映画作り事情が語られた。