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ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリスのkakkoのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

@岩波ホール

ようやく見に行って、深い感銘を受けた。
ニューヨークに住む本当に多様な人々と街の表情が主役とも言える、珠玉のドキュメンタリー。

「オズの魔法使い」のDVDを借りて続きを観たいというユダヤ系おじいちゃん。子供のプログラミング教室でロボットが思い通りに動きハイタッチして大喜びする子供たち。中華街では中国語サービス。点字や手話サービス。おばあちゃんたちのダンス教室。
詩の朗読会。コンサート。民主主義の柱がここにあるという黒人文化研究図書館館長の感動的なスピーチ。マルクスがリンカーンに送った書簡(2人は同時代人で、そんなことがあった!)を取り上げた、奴隷制と資本主義、共和主義の関係についてのレクチャー…などなど。

移民、黒人、貧困層、弱者に開かれた細やかな施策や企画からハイレベル、ハイカルチャー企画まで、公共とはこういうものだ、とこれでもかこれでもかと見せつけられる。
文化イベントやレクチャーを聴く市民の真剣な眼差しや高い向学心、感動に涙を浮かべる姿は、私がやってきた仕事と通じるものがありチョット血が騒いでしまった。そうそう、こういうことなのよね、と密かに客席でうなずいた。

それにしても、アメリカの力強さここにあり。アメリカの持つ魅力がギッシリ詰まっている。

しかし一方では、ラストベルトで職を失い、ドラッグやアル中で死んでいく白人労働者たちのアメリカも。
彼らは、インテリや金持ちの東海岸や西海岸はアメリカじゃない。その間の中部にいて貧困にあえいでいる自分たちが真のアメリカだと言う。トランプに望みを託して、移民や外国じゃなくまずは自分たちをを助けてくれ、と叫んでる。(金成隆一著『記者、ラストベルトに住むートランプ王国、冷めぬ熱狂』より 2018朝日新聞出版)。
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