emily

ポルトのemilyのレビュー・感想・評価

ポルト(2016年製作の映画)
3.5
 ポルトガル北部のポルト、26歳のアメリカ人ジェイクと、恋人の元にやってきた32歳フランス人のマティは考古学調査の現場で会い、カフェで再会し一夜の関係を持つが・・・

 それぞれの目線から物語をかたられ、最後に二人の目線を同時に描いていく。目線を非常に大事にしており、マティ側からジェイク側からとカメラは二人の目線になり、その目線の先がしっかりと交わる。
ポルトの幻想的な夜の街、昼の街を歩くことで描写し、流れた時間の中で、過去を回想し、色や音楽で時に絵画のように印象的なシーンを見せてくれる。

 ジェイクが見る未来と、マティが見る未来が交わらない。マティの部屋には大きな窓が二つあり、その前に二人は立つ。真っ暗な部屋の中外の明かりで二人の影が浮かび上がる。徐々に日が明けてきて、青白い色彩の中、二つの窓、二つの未来、二人は言葉ではなく目線を交わし、見つめ合い、嘘のつけない空間を作り上げていく。言葉より見つめ合う事で語られる真実。その目線には嘘はつけない。言葉では嘘をついてしまうが、まっすぐ見つめられた目線の中では人は嘘はつけない。交わらない二人だが、一瞬のひと時の人生最大の幸せを抱きしめて生きていく。時間軸をばらしながら描いていくことで、一瞬の思い出が永遠となり、街に息づく思い出達がしっかり生きている。
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