ピカル

ポルトのピカルのレビュー・感想・評価

ポルト(2016年製作の映画)
5.0

10月1日。映画ファーストデーだったので、新宿武蔵野館で『ポルト』を観てきました。

最近、特に新宿武蔵野館が大好きです。たまに映画館に行く私にとっては、新宿武蔵野館で上映される作品の作風にすごく惹き付けられます。

9月は私が最も尊敬する映画通の方にご紹介いただき、『パターソン』を観てきました。もちろん新宿武蔵野館で(笑)
ジャームッシュ監督作品は初めてでしたが、パターソンを観て、一気にジャームッシュ監督がお気に入りになりました!!
あまりに好きになりすぎて、パターソンのポスターをゲットしてしまったくらいです(笑) ただいま、私のアパートに飾ってあります。
映画鑑賞後、興奮しながら感想をツイートしていたら、それを見た友だちも気になって観に行ってくれたそうです。他にも私の感想を見て映画館へ足を運んでくれた人がいて、うれしかったです!!

そして、10月の映画ファーストデーに『ポルト』を観たきっかけは『パターソン』なのです。
『パターソン』を観賞した日に、たまたま新宿武蔵野館で『ポルト』の公開を知りました。チラシを手にとったとき、なんだか雰囲気がパターソンに似ているなぁ、なんて思っていたら、ポルトの製作総指揮がジャームッシュじゃないですか!! そりゃ納得です!!(笑)
作品のストーリーはもちろん、「ジャームッシュが惚れ込んだ才能」なんて紹介を見たら、もう観たくて観たくてしょうがなくて。22歳一本目の映画を『ポルト』に捧げることにしました。

感想を一言で言わせていただくと
いきなり生涯大好きな恋愛映画のひとつになりました!!!!!

私はあまり恋愛映画を観ることがなく、観ることがないというか、少女マンガを実写化した恋愛映画を観ても、「いい話だなぁ」と思うだけでしっくりこなくて、避けていたりしました。好きなラブストーリーを挙げても、『GOOD WILL HUNTING』の恋人同士のシーン、といったくらいでした。

でも、ポルトは違いました。
ストーリーすべてに共感できたわけじゃないけど、しっくりきて。
こういう作品がずっと観たかったんだ!! と、作品に出逢えたということだけでうれしくなりました。

そして、うれしくなったのは、なんと本編が始まってすぐなんです!!
『パターソン』では、毎朝、夫婦ふたりが寝ているベッドを俯瞰して真上から撮ったシーンがありました。ポスターにも使われていたシーンですね。私はこのシーンが大好きで、この美しくて愛おしいシーンを味わえただけでもパターソンを観てよかったと思っていて。
それと同じカットが『ポルト』の最初のシーンで登場するんです!!
私はそれを観た瞬間、もうすでにうるうるきてしまって。「ジャームッシュ……!!」と心の中で感謝を叫んだくらいです(笑)
『パターソン』を鑑賞後『ポルト』を観る、という流れは最高かもしれません。

『ポルト』のすばらしいところは、「一瞬」の描き方だと感じています。
恋愛映画だと、付き合うまでのソワソワがあって、告白のドキドキがあって、恋人同士になってからのゴタゴタがあって……というように、流れを描いているイメージがありました。
でも、ポルトは必要最低限の「一瞬」を描いてくれました。
それは、私が知りたかった一瞬なんです。私がじっくり味わいたかった一瞬なんです。

人を好きになる瞬間。
愛が生まれる瞬間。

相手と出会うきっかけでもなく、好きになる理由でもなく、結ばれる方法でもなく。
ただ、『愛する』。
ただ、愛する、ということを正面から描いた、こんなに力強い映画は初めてです。

ジャームッシュが惚れ込んだ34歳の新鋭監督ゲイブ・クリンガーは、「一瞬」を映画の中で「永遠」に変えてくれました。ひたすら過去を振り返ったり、ふたりの未来を無理に予想したりせず、「一瞬」を丁寧に丁寧に見つめることで「永遠」に変えてくれました。

お互いが視線を感じた一瞬。
それは、相手に魅了された一瞬というよりは、お互いがお互いの中に「愛」を認めた一瞬です。
その瞬間には、音も言葉も、おそらく色もなくて。
だからといって、一瞬が多くを語っているのともちがう。
むしろ、音や言葉、そして色ですら語れない領域に達している、なにも寄せ付けない世界が存在している、という感じなのです。
こんな表現に出逢えたことがうれしくてしょうがないです。

ふたりの会話もすばらしかったです。
どのセリフもお気に入りなのですが、言葉が良いというだけではないです。
ふたりのためのテンポで、ふたりしかいない空間で、ふたりにだけに流れる時間の中で生み出された言葉だから、輝いて見えるのだと思います。

ポルトの街並みも魅力的でしたね。
ポルトの風景が映し出されたシーンでは、映画を観ているというよりは、美術館で一枚一枚の絵をじっくり味わう感覚に近かったです。

この作品で最も私の胸を打ったのは、主演のアントン・イェルチンの演技かもしれません。彼が『ポルト』で魅せてくれた静寂と孤独は、とても20代で生み出せる表現とは思えませんでした。
そして、どうしても見逃すことのできない事実があります。
それは、アントンがもうこの世界にはいないということ。あんなに人を惹きつける演技をしたすばらしい俳優とこの先映画の中でしか出会えないなんて。それだけで泣けます。
アントンの死は確実に作品の色を変えてしまったと思います。『儚さ』という透明な、これ以上ない強烈な色に染め上げてしまったと思います。空想と現実の間にあるこの色に、私は胸を打たれてしまうのです。
本編のラストでは「アントン・イェルチンに捧げる」と表示されるけど、本当は、アントンが捧げてくれた作品なんじゃないかと。私はこの映画を一生忘れません。

愛ってなに!?
好きってどういうこと!?
とガタガタ騒いで知りたがるくせに、さらっと答えを提示されたくはない、たとえ答えがあっても素直に認めたくはない。そんなワガママで考えたがりの私のような人間にはぴったりの作品でした。

『愛』は理由も方法も説明もいらないんだよ。
『愛』は『愛』のままでいいんだよ。
そんなことを教えてくれる、そっと認める勇気をくれる、強くて優しい映画でした。

ここまでいろいろと語ってきましたが、『ポルト』を「泣ける感動映画」なんて間違っても言いたくはありません。
むしろ、泣くな!! 絶対泣くな!!
必死で目に涙をためて、一瞬でも見逃さないでくれ!!
全シーン目に焼き付けてくれ!!
そんな作品なのです。

……とは言ってもやっぱりうるうるきてしまうので、そのときは2回目を観て思いっきり泣きましょう(笑)

私はひとりでも多くの人がこの作品と、「一瞬」が「永遠」に変わる瞬間と、そしてアントン・イェルチンに出逢えることを願っています。