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ニッポン国 vs 泉南石綿村のaのレビュー・感想・評価

ニッポン国 vs 泉南石綿村(2017年製作の映画)
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いくら後悔したって、いくら過去に戻りたいと願ったって、今しか生きられない世界で生きている。産まれ、生き、そして死ぬ、そんなサイクルをきっと、もっと注視し続けなければならない、注視され続けなければならない。画面が止まり次々と訃報が流れる、裁判を続けている間、元気なあの人も、余命を超えて生き続けていたあの人も、チューブを付けてはいるが生きていたあの人も次々に亡くなっていく。今という時間は止まることがない、動きと痛みを止めた過去は同時に痛み続けている、未来は明日より近いかもしれない、歳を重ねるということはそういうことだ。無意識に体内に溜まり時限爆弾と化したアスベストが、20年間苦しみ続けた夫の姿を見つめた日々が、ぶつけどころがありすぎて内に向き続ける怒りが、消えることも癒えることもない、それでも一つの謝罪と一つのお金で少しは変わるかもしれない、という。惨めか残酷か、はたまたちょっとした気まぐれの希望か、しかし何らかの形で姿を表した透明な光は人を人たらしめることになる。
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