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イカロスのRenのレビュー・感想・評価

イカロス(2017年製作の映画)
4.0
第90回アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門を制した大問題作。この映画を全世界に公開した裏側で誰もひっそりと消されていないことを祈る。東京オリンピックも終わり、パラリンピック真っ只中にこの映画を薦めるのもどうかと思ったのだけど、あえて。

「薬物を使用して自転車レースに臨んでもドーピング検査をパスできるか?」というトンデモYouTuberの企画みたいな、世界まる見えで取り上げられていそうな導入。それが2時間後には、あまりに景色が違って見えるのが素晴らしかった。
ロシアが国家ぐるみで隠蔽し続けたドーピング問題へ切り込み始めてから、その辺のスパイ映画が裸足で逃げ出すほどの緊張感で映画が進行していく。ロシアのドーピング検査を受け持つ研究所所長が、抜け穴知ってますよと名乗り出てくるのがヤバすぎる。

隠蔽体質の根深さがここまで深刻なものだったとは。上層部もその上層部もとにかく不正を揉み消し続け、そこにはスポーツ競技への冒涜しかない。告発者がどんどん消されていくのも、そのやり方しか選択肢無いのかと。全部実話なので、この作品が公開されたことで製作者が消されていないことを祈るばかりだ。

告発と隠蔽、関与と逃亡、スポーツと政治。今作のブライアン・フォーゲルをはじめとする、翼が溶けることも厭わず太陽を目指したイカロスのような勇気ある告発と解明が、再びスポーツに光を当ててくれることを願う。

2016年のリオデジャネイロ五輪での陸上競技出場禁止勧告も記憶に新しいため、オリンピックの度にこの映画が注目されたらいいなと思った。映画公開時点では、問題は解決されていないので....。
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