えいがうるふ

マーウェンのえいがうるふのネタバレレビュー・内容・結末

マーウェン(2018年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

バービーやG.I.ジョーなどのオーソドックスなアメリカンフィギュアやドールハウス好きは必見。
一言でフィギュアおたくと言っても、日本で主流の美少女キャラなどのアニメフイギュアはそもそもが二次元のフィクション造形物の三次元化なのに対し、あちらでもともと生まれた元祖フィギュアはそもそも実在の人間の造形が元になっていることに改めて気がついた。そのせいか、この作品でCGで登場する人物たちはあくまでも人形として手足の繋ぎ目もそのままに描かれているのに、モデルとなった生身の女性たちの多くがそもそも人形じみたルックスなので、いわゆる不気味の谷に落ち込みにくい。
ともあれ、CGと実写の繋ぎ方の演出がとても自然で、ストレス無く妄想と現実がシームレスに入り交じる映像をファンタジーとして楽しめた。

しかし、そんなお人形遊びの楽しさがあふれる映像のポップさとはうらはらに、意外にもガチな実話ヘイトクライムが話のベースになっているのがこの作品のミソで、ふむふむと考えさせられた。
たとえ人に理解されにくい趣味嗜好を持っていようと(それが犯罪につながらない限りは)、堂々と胸を張り自分の好きなものを好きだと主張できる社会であってほしいし、苦難の末に自分の好きなものを極めて社会復帰を果たした実在の人物の逆転成功譚として、観る者に希望を与える作品でもあった。

ただ、彼が自身の妄想世界で好き勝手する登場人物のモデルとされる周囲の実在の女性たちが、皆とても大人でやさしい人々なので問題になっていなかったが、客観的に観ればドン引きされかねないヲタクの純情の暴走が描かれてもいるので、そこらへんはスティーブ・カレルのキャスティングにかなり救われている気もした。

ゼメキスが自作をネタに遊んでいるような展開もあるが、その見せ方がかなり子供っぽいのも微笑ましい。人は老いると子どもに還ると言われるとおり、この映画の制作自体が元祖ヲタク青年だったゼメキスにとっての箱庭療法だったのかも、と思わせる節も。

ところで私はルブタンもマノロも持ってないけど美しい靴を眺める楽しさはよく分かる。そうしたデザイナーたちのドキュメンタリーも好きだし、映画の中で美女たちが颯爽と履きこなすピンヒールにはうっとりするし、靴道楽が出てくる映画は妙に心が躍る。
でも、芸術品のようなハイブランドの靴は自分の足に合わせたら逆にイメージが壊れそうで、履くよりもひたすら眺めていたいと思うばかりの私には、靴フェチへの道はまだまだ遠そうだ。