こん

ミスミソウのこんのネタバレレビュー・内容・結末

ミスミソウ(2017年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

漫画未読で結末や詳細なストーリーを知らずに鑑賞。

とても良かった。
いくつか突っ込みたくなる部分もあるけど、とても好きな映画だった。

クラスメイトから壮絶ないじめを受け、家族を焼き殺された春花。そこから春花の復讐劇が始まるというのが大枠のストーリー。

まず春花をいじめていたこのクラスメイトたちは、人を殺しても反省するどころか「ゲームセンターもレンタルビデオ屋もないこんな何もない町で、家が燃えるのを見たときワクワクした(意訳)」「やられる前にやる」みたいなことを言う連中。

中には「やばいよ」と言う生徒もいたけど、その生徒も放火を起こす前までは一切悪びれることもなくいじめに加担していた。

いじめていた生徒たちを淡々と確実に殺していく春花の姿は本当に凄かった。特に一番最初、妙子の取り巻き3人を殺すところ。「自殺してくんない?」と言い放つ吉絵(だったかな?)の目を春花が突き刺すシーンはもう鳥肌が立った。
なびいた黒髪の奥、まっすぐ吉絵を見据えてそのまま目を突き刺すスローモーションの演出は春花の「覚悟」を感じられてとても良かったし、何よりものすごく美しかった。


そしてこの映画は「あちら側」に行ってしまった人間と「こちら側」に留まった人間が、タイトルでもある「ミスミソウ」でうまく表現されているなと思った。
春花の家に火を放って両親を焼き殺した生徒たちは「あちら側(=超えてはならない一線)」に行ってしまった人間で、ミスミソウのように雪をかき分けて生き延びることはできない。
自身の両親と祖母を手にかけ、春花の祖父に怪我を負わせ、春花のことも殴り(本人的には「好き故」にだけど)、家族が焼け死んでいくサマを写真におさめていた相場も「あちら側」の人間だから、雪の中でそのまま死んでいく。
そして春花自身も元々は「こちら側」にいた人間だけど、壮絶な体験のせいで「あちら側」に足を踏み入れてしまう。だから冬を乗り越えて春を迎えることはできない。

唯一生き残った妙子は、いじめていた事実はあれど実は一番「こちら側」いた人間で、一線は超えていない。だから流美にあれだけ酷い怪我を負わされても春を迎えることができた。
いじめにしても妙子が自ら手を下すことは実は殆どなくて、手下たちが「こうだよね?」という独断で行ったもの。それにこの映画で「野崎…許して…」と言ったのは唯一妙子だけ。
何故妙子だけ生き残る演出にしたんだろうと考えた結果、これが一番自分の中でしっくりきた。

あとあれだけ子どもが行方不明になってるのに全く見つからないのはいくらなんでもおかしくないか?とも思ったんだけど、大人たちの「鈍感さ」を表す表現手法としてあえてそうしたのかなと。(これは一緒に見た友人が鑑賞後に言っていて「確かに」と思ったこと)
思春期の多感で敏感な子どもと、起こっている事実に気付かない大人。
自分の子どもがいじめに加担していて、どこかおかしいことに気付かない(もしくは気付かないフリをしている)から、子どもが死んでいることにも気づけない。

鑑賞後も色々なところに考える余地があって本当にすごい映画だなと思った。確かに噂通りグロいけど、ただのスプラッター映画に成り下がらない。

漫画の結末や内容は映画を見たあとに知ったけど、妙子が死んだままの漫画の方が正直好みではある。
ただ妙子と春花の関係性(というより妙子が春花に向ける想い)は個人的にかなり琴線に触れるものだったので、漫画も読んでみたいと思う。
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