Yoshishun

ミスミソウのYoshishunのレビュー・感想・評価

ミスミソウ(2017年製作の映画)
3.7
良い意味でも、悪い意味でも、原作に忠実な漫画実写作品。

原作はアニメ化もされた『ハイスコア・ガール』の押切蓮介によるホラー漫画。ただしホラーというよりは、"愛されたかった者達の物語"と謳われるように、愛されなかった子供たちが、その悲しみを暴走させ、いつしか私欲を満たそうと奔走する姿が切ない。過剰な暴力描写を独特のタッチで描き、今では鬱漫画と評されることも多いが、いじめを受ける主人公の心理描写やそれにまつわるトラウマを植え付けられた者達の葛藤と苦悩を青春真っ只中の中学生の間で繰り広げられることで、十分大人になりきれていない年齢だからこそ、より感情的に伝わる。人間模様が丁寧かつ繊細すぎたが故に余計に復讐物語に悲哀を感じた。

そんな同名漫画の映画化だからこそ、残酷描写に力をいれすぎず、人間ドラマに焦点を置いて展開されていくことが大前提である。結論から云うと、その点に関しては成功しているとは言い難い。残酷描写の再現度はほぼ満点だが、その背景にある心理的不安や葛藤はやや物足りなく感じる。無惨にも野咲に惨殺されていくいじめっ子達の心理的描写、特に家族を焼き殺した後の描写が少ない。これによって、殺されても仕方ない位にしか感じなかった。加えて、野咲が壊れていく様は原作だと普通の人間の顔ではない程の狂気染みたものであったが、やはり実写では表現ができなかったのか、とことん無表情である。感情がこもっていないのか、いや原作はまだ十代の女の子らしいあどけなさが残っていた。その点でも惜しい。

ただ映画は映画でそれなりに好意を持てる点もある。
極めつけは、原作と異なる結末。大きな意味合いは同じでも、野咲との関係性は大きく異なる。映画版はより青春的な意味を持たせており、これはこれでありだと感じた。
また、映画になり、色が付くことで、原作よりも色彩豊かで美しい。また余計に切なさが込み上げてくる。血の赤と雪の白のコントラストは勿論のこと、服の黒、青、黄、様々な色が映える見事な演出。滲み出る残虐性と悲壮感がたまらない。

有名俳優のいない小規模作品であるが、メジャー作品にはない、というより描けない挑戦的な作品でもある。原作既読でも未読でも中々の衝撃を味わえる佳作。

ちなみにR15+指定なので、グロ耐性がない方は注意。また体調がよろしくない、精神不安定な方は特に注意してください。
Yoshishun

Yoshishun