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OVER DRIVEのtakのレビュー・感想・評価

OVER DRIVE(2018年製作の映画)
3.1
成長物語は、映画を観て感動させる要素の一つだ。だから最初からデキるヤツが主人公の場合、ストーリー上いろいろあっても、冒頭と印象がさほど変わらなくて心底物足りないと思うことも多い。羽住英一郎監督の大ヒット作「海猿」の主人公がまさにそれで、僕はどうも好きになれなかった。

羽住監督がモーターカースポーツの世界に挑む「OVER DRIVE」の主人公兄弟。これがまたどちらもデキるヤツ。コツコツと仕事をこなすメカニックの兄と、天性の才能あるドライバーの弟。やっぱり映画の最後までデキるヤツなのは変わらなかったけれど、「海猿」と違ってこの二人を見守っている2時間は決して嫌ではなかった。自分のことばっかり主張する弟だけど、実は兄を信頼しているし、過去の行いを悔いている。そんな弟を自分の技量で一途に支える兄。「俺たちはバディだ」とか言ってた「海猿」が、結局個人の力量やんとしかし思えなかったのと違って、お互いを認めている兄弟の様子が「海猿」にはないバディ感があって、意外と好感だったのだ。

通常カーレースの映画は表情は見えないし、車の順位を映像だけでちゃんと理解させるのは難しいものだ。本作はラリーの映画だから、サーキットのレースと違って車が競り合う場面がないし、ドライバーの表情が分かりづらくてもナビゲーターやピットの面々がいることで、状況が伝わりやすい。ライバルチームとの順位争いもテンポがよくて、思っていたより楽しんで観ていられた。

そんな男二人のドラマに絞り込んでいたら、「フォードvsフェラーリ」みたいな没入感があったのだろうが、スポンサー会社の担当者女子が、男たちのドラマにいちいち水を差すのだ。映画は彼女の成長物語でもあるんだけど、チームの一人としてピットの面々に認められる経過があるわけでもないし、自分をラリーの仕事に押し付けた上司に頑張りを認めさせることもない。彼女の会社への逆襲がラストに用意されていたらまだよかったが、そこがないなら、もう男二人のドラマとして観たかった。

北九州ロケはレトロな街並みの門司港、雄大な平尾台など。いろんな絵が撮れるのがよき。赤煉瓦が素敵な大阪商船ビル前をドリフトで走り抜けるなんてかっちょいい。
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