ノラネコの呑んで観るシネマ

OVER DRIVEのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

OVER DRIVE(2018年製作の映画)
4.2
モータースポーツものでも珍しいラリー映画、しかもオリジナル。
まるでバブル期の様な代理店主導の企画だなあと思っていたが、これがなかなか良く出来ている。
物語の軸をありがちなライバル対決でなく、同じチームでメカニックとドライバーとして働く、兄弟の確執にしたのが面白い。
弟が走って、兄が直す。
チャリダーだった子供時代から続く兄弟の関係を、お互に負った傷から修復し、それぞれの夢を一歩進めるまでの物語。
やたら脱ぎまくる真剣佑の弟は、中二からそのまま大人になった様な非共感キャラなのだが、やがてそれぞれの心の内が見えてくる。
兄弟の確執の背景にあるのが、初恋の切ない思い出というのがいかにも男の子。
子ども時代パートと、それを受けるラストシーンがとても印象的だったのだが、羽住英一郎はもっとジュブナイル的なのを撮ったら良いのではないか。
「おっぱいバレー」も良かったし。
まあ、プロットそのものは教科書的に予定調和なものだが、見せたいのはラリーの方だから話は王道でいい。
そして本作の美点は、相当にモータースポーツ好きな人たちが作っているのが、映像から十分に伝わってくること。
ディテールの説得力は相当なものだし、全部が実写ではないが、CGとのマッチングも悪くない。
しかし、かなりお金もかかった力作なのに、客入りはあまり良くない様。
残念ながら、この種の映画のマーケットは、今の日本では小さいわなあ。
その意味でも、代理店主導でないと作れない映画だろう。
大スクリーンで観るべき作品なので、上映縮小される前に行った方が良いかも。