skm818

ビール・ストリートの恋人たちのskm818のレビュー・感想・評価

3.9
レイプ犯として収監されてる男性と彼の無実を信じて奔走する恋人とその家族の話。要所要所に2人のこれまでの日々が挟まる。それだけっちゃそれだけの話なのだが、黒人ゆえに受ける理不尽な仕打ちについてもしっかり盛り込まれていて、社会性を感じる。これすごくいいなと思うのは、ヒロイン・ティッシュの家族が全力で彼女の味方をしてるとこ。彼氏ファニーの父親も理解あるいい人なんだが、母親と姉妹はひどい。ファニーの母親は妊娠を告げたティッシュにそんな子どもは精霊に殺されてしまえなどと言う。腹を立てた夫が彼女を殴る。それに対してティッシュの家族はファニーの父を外に出し、母親には手当てするための薬は差し出すけれど、あんたの言ったことはひどい、出て行けとはっきりと言う。殴るだけが暴力ではない。そのことがはっきり出ていて好感が持てる。ファニーのティッシュに対するアプローチも無理矢理なところがひとつもなくて素晴らしい。それでいてなかなか釈放されない苛立ちをティッシュにぶつけるなど、決して聖人ではない描写も良い。レイプ被害者のロジャーズ夫人に対しても、彼女のことは責めないんだよね。レイプはあったということを疑うのではなく、ファニーではないということを強調する。経緯を考えるなら、あの白人警官がファニーに対して思うところがあって、事件をいいことにファニーを逮捕し、証言を誘導したのだろう。親切な白人がほとんどおそらくマイノリティな人たち(ヒスパニックやユダヤ人など)だっていうのもねー、そういうことなんだよなと思う。そしてけっきょくファニーは釈放されずに刑期を勤めることになるんだけど、家族はきちんと面会していて愛は続いているという終わり方。最初の頃にくらべると親としての顔にもなって精神的な落ち着きが感じられる。ひどすぎる世の中、こういうレベルのところにしか幸せはないのかもしれない。
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