ピカル

ビール・ストリートの恋人たちのピカルのレビュー・感想・評価

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【愛が連れてきた話】

『ビール・ストリートの恋人たち』観ました。

『ムーンライト』のバリー・ジェンキンス監督作品。
『ムーンライト』の余韻がすごく好きだったので、そんな監督が描くラブストーリーを観てみたくなり、映画館へ。

ファーストシーンは、並んで歩く恋人たちを空から優雅に撮ったカット。
この時点で、「ああ、これは二人のための物語なのだな」と気付く。

“二人”というのは、1970年代ニューヨークに生きる若きカップル、妊娠中のヒロイン・ティッシュとその恋人・ファニーのことだ。
ファニーは無実の罪で逮捕され、刑務所の中で過ごし、ティッシュは彼のために懸命に闘う。

この事件の裏には、人種差別問題がある。
3月に『グリーンブック』
4月に『ブラック・クランズマン』
そして、5月に『ビール・ストリートの恋人たち』
という、黒人と白人の関係性を描いた映画を連続で観てきた。
三作を観終えた今、この順番は必然だったようにも思える。
『ビール・ストリートの恋人たち』は悲劇でも喜劇でもないし、もしかしたら明確なラストシーンはないのかもしれない。
現代の社会問題はまだまだ終わりが見えず、だからといって、困難な状況を生き抜く恋人たちの愛も尽きないのだから。

『ビール・ストリートの恋人たち』

原題『If Beale Street Could Talk』

“can”ではなく“could”であることから、これは“仮定”ではなく、ある街を愛で彩り、あるストリートにさえ救いを求める恋人たちの、強烈な“願望”を秘めた映画なのだろう。

『ムーンライト』同様、映像の色彩が美しかった。
特に印象的だったのは、ファニーが彫刻するシーン。
自分たちの手で愛を育むことを証明したシーンだった。

「彫刻刀と彼女が宝物だ」と語った彼は、愛を自由に形作ることを夢見ていた。
刑務所の面会室で恋人とガラス越しに向き合うことしかできない彼女は、彼と同じ方向を見つめることを願っていた。
生まれた新しい命は、そんな二人にささやかな祝杯をあげることを許してくれた。

灯りを消し、部屋に響き渡るレコードの音楽のように、映画館の暗闇の中でこの映画にしか生み出せないどこか浮遊した時間と光を体験できたこと、ふと思い出す夜がこれからあるかもしれない。
二人の愛が連れてきてくれた夜こそ、クライマックスと呼びたい。