ねーね

スリー・ビルボードのねーねのレビュー・感想・評価

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
4.1
3枚ぽっちの真っ赤な看板を通して、まさかこんな濃厚な人間ドラマが待ち受けているなんて…
みんな誰しも悩みを抱えていて、お互い憎み合いながらも、きっと気づかぬところで支えあっているんだろう。

正直、この二時間は耐え難いものだった。
今すぐにでも脱出したくなるような閉塞感に満ち溢れた掃き溜めのような街で、出てくる登場人物は誰も彼もが不満を抱えしかめ面をしてばかり。
復讐が復讐を生み、怒りが怒りを生んでいく、負の連鎖。
だけどふとした瞬間に他人の優しさを知ったり、それが巡り巡って誰かへの親切に繋がっていたりする。
優しさが優しさを生み、赦しが赦しを生むことも、あるんだと信じたくなる。
人の中身って一目見ただけじゃ何もわからなくって、でもだからこそ人と関わることには価値があるのだと思う。
ミルドレッドが息子に泣きつくあのシーンと、オレンジジュースのストローのシーン、人の心の奥底に触れた気がしてどうしようもなく嗚咽が止まらなかった。
最後、彼女はきっと、ようやくやり場の無い重圧から解放されたんじゃないかな。

映画らしい展開がわざとらしくないのは脚本と編集のなせる技。
音楽のセンスも良く、重いテーマの話なわりに観やすい作りになっている。
サム・ロックウェルには是非オスカーを獲ってほしい。
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