タケオ

スリー・ビルボードのタケオのレビュー・感想・評価

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
4.2
ゴールデン•グローブ賞で作品賞、脚本賞、第90回アカデミー賞では主演女優賞と助演男優賞を受賞した骨太クライム•サスペンス‼︎

全体的に暗く陰鬱な展開が続いていくが、随所で挟まれる人種差別や女性蔑視をはじめとした過激なジョークの応酬と、綺麗事も屁理屈も切り捨てたありのままの"人間"を生々しく描いた様が不謹慎ながらも笑いを誘う。

本作で一番期待していたのは「ファーゴ」でアカデミー賞主演女優賞を受賞したフランシス•マクドーマンドの演技だ。怒りの衝動に身を任せ暴走する母親の演技は"超"がつくほどパワフルで、時折みせる後悔や苦しみの表情はあまりにも切ない。

彼女は本当に期待以上の演技を披露してくれたが、何よりも私の期待を上回ってきたのはサム•ロックウェル‼︎

マザコンで血の気の荒い差別主義の警官が紆余曲折を繰り返しながら目覚めていく姿を圧巻の熱量でみせつけた‼︎

ネタバレになるので多くは語れないが、オレンジジュースのシーンで涙腺が崩壊したことだけは書き記しておきたい。

3枚の広告板が暴き出す、閉鎖的田舎の人々の真の顔。

人間とは愚かで醜く滑稽で、少しだけ愛に溢れた生物だ。だとしたら、そんな生物の行き場のない怒りは果たして何処へ向かっていくのか?

緻密な人間ドラマと実力派俳優陣の繊細な演技、そして鑑賞後の余韻がなんとも味わい深い贅沢な作品だ。
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