アキラナウェイ

スリー・ビルボードのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
4.9
今年の初っぱなから傑作キタこれ!

こんな映画かな?と予想して期待通りの名作も、
こんな映画かな?と予想していたら大ハズレの迷作も、世の中色んな映画があるけれど。

そもそも映画の愉しみ方はそんなもんじゃない筈だ。

予想を覆されるから面白い。何度も思わぬ展開を目の当たりにして、やがて観る者は予想などしなくなる。物語の流れに身を委ねる。物語そのものを愉しむ。映画とはこうあるべきだ。

ミズーリ州エビングの町の田舎道に掲げられた3枚の巨大看板。7ヶ月前に娘をレイプされ殺害された母親ミルドレッド・ヘイズ(フランシス・マクドーマンド)からの辛辣なメッセージ。犯人の手掛かりがいまだ掴めず、捜査の進展が見られない警察署長ビル・ウィロビー(ウディ・ハレルソン)に宛てたものだ。やがてこの3枚の巨大看板が様々な騒動の火種となっていく。

フランシス・マクドーマンドの圧巻の演技!!深い悲しみを内包しつつ、激しい憤りを噛み締める表情。決して屈しない強い眼差し。辛くても俯いたりせずに前を向いて突き進むパワフルお母ちゃん。完全にミルドレッド・ヘイズに成り切った女優魂が観る者を惹き付ける。

ウディ・ハレルソンもさることながら、警官ジェイソン・ディクソンを演じたサム・ロックウェルが素晴らしい!映画の始まりと終わりで、印象がガラリと変わるのが彼。初めは嫌いだったのに、最後は何だか好きになる。劇中、彼の行動に思わず拍手してしまった程。キャストが皆、素晴らしい演技力でアンサンブルを奏で、出てくるキャラクターが皆愛おしい。

テーマとは裏腹に、決して暗く重くなり過ぎない脚本。要所要所で流れる音楽がまた素晴らしい。

予測不能の物語、キャストの演技力、素晴らしい脚本、センスの効いた音楽とこの映画の面白さは3枚の看板じゃ書ききれない。

反目し合っている様に見えても、人と人は何処かで繋がっていて希望を持って前に進める事を教えてくれる映画でした。