えむえすぷらす

スリー・ビルボードのえむえすぷらすのレビュー・感想・評価

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
5.0
人は変わり得る事を信じている。
正義が為されてないなら、為されるように仕向ける。
あの人は俺を信じてくれているなら、それを信じる。

そんな三人の生き様を描いた作品。
宗教色は薄いのにこれ以上にない宗教的な寓話になっている。

一人だけ神視点で動いている。この人物は洞察力が高く先が良く見えていた。そして他者に対して最大限の配慮をしてみせた。
実のところ彼こそがお釈迦様であり、他の主要登場人物は孫悟空だった。

火は人を殺す。火は浄化する。そういう二面性を突きつけてくる。

追記。もう1回見ました。みんなの性格は何気に一貫してます。
・智者は愚者と怒者の本質を見抜いている。智者は一貫して気配りを見せる。そしてその気配りは智者がいなくなった後も物語の大きな流れを生み出していく。
・愚者はある「愛」を受けて心から変わってみせますが、その「愛」は根にある愚者の心情を見抜いている。そして愚者の行動を振り返ると一見無茶苦茶に見えて実は誰かを思いすぎる故の愚かしい暴走であって凶行ではない。そしてそんな愚者が悔い改めた時に見えてくるのは純粋過ぎるアホの子であって馬鹿ではなかった。
・怒者には怒る理由があった。でもそれは自身への怒りでもある。ブランコは真実を揺らす。

店に姿を見せた男はバーの男でもあると思うのですが、この意味も考えさせられる。その一方で警察署長は「砂だ」といって違う事を伝えている(あのシーンは愚者が本当にアホの子なんだとダメ押ししてくる)。
この作品は事件をきっかけに突き動かされた三人を描いた世界の神話であり、彼らの心情が全て。だからあの終わり方で良いのだろう。