柏エシディシ

スリー・ビルボードの柏エシディシのレビュー・感想・評価

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
4.0
おっそろしくクレバーな脚本。見どころ満載のアンサンブルキャスト。面白い!

犯罪がらみのひねくれたユーモアに溢れたアンサンブル劇でフランシスマクドーマンド主演となると、どうしてもコーエン兄弟の作品を思い出してしまうのだけれど、ユダヤ的なシニカルが過ぎる彼方より、ウェットで情深いテイスト。
劇中で描かれてる事は相当ハードでショッキング、容赦もないけれど、ポイントは「情けは人の為ならず」
ウェットになり過ぎるギリギリ手前で観客に想像を促す幕引きもジャストで、自分は大好きです。

マーティンマクドナー監督。
「セブンサイコパス」は気になっていたけれど、ノーマークでした。
英国人で劇作家なんですね。絶妙なダイアローグや突然挟まれるショック演出の斬れ味などナルホド。
過去作見返します。

キャスト陣はもう全員が最高。
主演3人には残らずオスカーをあげたい。
フランシスマクドーマンドはサスガ。豪胆さと繊細さを併せた素晴らしい演技。
ウディハレルソンも「強面ながら思慮深く頼り甲斐のある兄貴」という得意の役柄の最高峰。「手紙」のシーンは彼特有の南部訛りがイイ塩梅でこの為にキャスティングしたんじゃないかっていう。
そしてそして、サムロックウェル。実力の割にはやっすいキャラクターを得意としているせいか評価の低いキャリアでしたが、そのやっすいキャラの最高到達点で過去最高の演技。最敬礼。
そのほか、味わい深いピーターディンクレイジや脇役陣全員も素晴らしい。前夫の若いガールフレンドの役回りとかも本当見事だよなぁ。

南部のレッドネックやイラクの暴行事件を示唆する描写など。いろいろな切り口からも語れる本当に豊かな映画。何より、とっても笑える映画です。
柏エシディシ

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