うめ

スリー・ビルボードのうめのレビュー・感想・評価

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
4.3
あの娘を失った時。
私の心に着いた小さな炎。

それは、
あの道を通る度。
誰も使わなくなった部屋の前を歩く時。
声を思い出す瞬間。
大きく大きく大きくなってしまった。

いつか。
この思いをぶつけられる相手が見つかるのを願い、業火に耐えてきたのに。

でも、もう無理。
炎は私の大事な何かを焼き尽くしてしまった。
終わる事のない
あの娘の痛みを叫びを
私の灼かれる苦しみを
感じるがいい。
今となっては、この炎こそが私なのだから…



フランシス・マクドーマンド。
鬼気迫るとは、彼女にこそ相応しい。
男の私なんかが分かるものではないと思うが…
母にとって、我が子を奪われる。
想像を絶するだろう辛さ。
声にならない叫び。
怒りに突き動かされる危うさ。
失うもののない強さ。
ふと我に返った時に見せる脆さ。
これは、演技が上手いとかじゃない。
彼女だからこそ導きだせるものだ。


サム・ロックウェル。
差別的で
暴力的で
マザコンで
そんな彼が炎に巻き込まれる時。
止まっていた歯車が動き始める。
相変わらず、素晴らしい役者さんです。


ウディ・ハレルソン。
毎回、カメレオンのように変わる色。
個性的なアクの強い顔で、そんなに幅広く出来そうには見えないのに…
どんな役でもこなしてしまう。
そんな彼にいつも驚かされてしまう。


決して派手ではないが、まるで青白い炎のような映画でした。
パッと目を惹く赤い炎なんて、青くひっそりと燃えるその熱さには敵わないんだ。


今年初の劇場。
スクリーンって最高ですね。
私の心にも炎が着きました。
うめ

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