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スリー・ビルボードのnagashingのレビュー・感想・評価

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
3.5
是にも非にもよらないほとんど綱渡りみたいなバランス感覚はスリリングなんだかストレスフルなんだかよくわからんが、そこに感心もした気がする。ひたすら宙吊り状態を維持しつづけてしまうストーリーテリングにせよ、ボタンがかけちがっていく報復の応酬にせよ、チャップリンの箴言のごときエモーショナルなクローズアップとシニカルなロングショットの混淆にせよ、怒りの連鎖の断絶を訴えつつも暴力の発露を予感させ、しかしその実現じたいは永遠に保留してしまう梯子はずしのラストにせよ。とくにラストは清爽ですらあった。映画に銃が出てきたら、こちらは発砲するのを期待してしまうし、真実の代わりに暴力による感情の昇華をもとめてしまうものだが、いっぽうどこかで倫理的であってほしいとも思うわけで、そういうアンビバレンスをどんぴしゃで体現してくれる気持ちのよさ。
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