ナカトミツヨシ

スリー・ビルボードのナカトミツヨシのレビュー・感想・評価

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
4.4
めっちゃ面白かった...

一応の主人公は、娘を殺された母親「ミルドレッド」。
あまりに警察が何もしてくれないので3枚のビルボード(立て看板)で警察に「まだ犯人捕まらないけど一体何してるの??」とメッセージを送るところから始まる。

「一応」と書いたのが、ちょっと群像劇チックなところがあって、あと2人代表的なキャラが登場する。
警察署長の「ウィロビー」と差別主義暴力警察官の「ディクソン」。

この3人が「主人公」として、あるシーンではミルドレッドが、あるシーンではディクソンが中心になって物語を回していく...そんな感じになっていた。

面白いのが、この3人が絡まると物語が予想外の展開を見せだすこと。
想像してた未来とは全く違う方向へ転がっていく映画だった。

タイトルにある「スリー・ビルボード」は、文字通り3枚のビルボードから始まる話でもあるんだけど、その3枚のビルボードに象徴される3人のキャラクターたちの群像劇でもあった。
看板なんて「オモテ面」は良く見るかもしれないけど、「ウラ面」を見ることは少ない。
人にももちろん、見えている「オモテ面」と簡単には見えない、人によっては見せようとしない「ウラ面」がある。
そして後半になっていくにつれ、3人それぞれの意外な「ウラ面」が徐々に明らかになっていくと...もうこの映画の虜になっている。
自ずと、意味ありげに頻繁に映るビルボードの「ウラ面」も、じっくり見るようになっていた。

演技の凄みも半端じゃなく、視線だけでも全て語っちゃうんじゃないかと思ったシーンも。
それだけではなく、演出や音楽、脚本に至るまでスキがない。

基本的にアメリカの差別や暴力といった冷たい、重い部分への静かな怒りみたいなものが続く(舞台もミズーリだし)んだけど、そんな中心が温まったのが「オレンジジュース」だった。
何故なのかは、見てからのお楽しみ。